油圧配管材料の選び方|STPG370・STS370・SUS316Lの使い分けと継手選定

油圧配管の材料ミスは、破損・油漏れ・最悪の場合は爆発的な管破裂につながります。「とりあえずステンレス」「とりあえず鋼管」では設計として成立しません。圧力ランク・腐食環境・温度・コストの4軸で正しく選定するための知識を整理します。

関連記事油圧システム全体の構造については 油圧の基礎知識|原理・種類・構造・使用材料 をご覧ください。

油圧配管に使われる3種類の主要材料

STPG370(圧力配管用炭素鋼鋼管)

JIS G3454で規定される、油圧固定配管の主力材料です。最小引張強さ370N/mm²。電縫管(溶接管)とシームレス管の両方がありますが、高圧用途にはシームレスを選びます。入手性とコストのバランスが最も良く、一般産業機械・工作機械の油圧回路に広く使われます。

STS370(高圧配管用炭素鋼鋼管)

JIS G3455で規定されるシームレス専用規格です。引張強さはSTPG370と同じ370N/mm²ですが、肉厚の寸法精度・材質均一性がより高く規定されており、より高い圧力での使用が想定されています。STPG370との違いは「シームレス限定」「肉厚公差が厳しい」点です。35MPa以上の高圧ラインに使います。

SUS316L(オーステナイト系ステンレス鋼管)

JIS G3459準拠。耐食性が最も高く、食品・医薬・海洋・薬品環境で選ばれます。Moを2〜3%含有し、SUS304より塩化物腐食に強い。引張強さは480MPa以上と炭素鋼より高いですが、コストは炭素鋼の3〜5倍になります。作動油との化学的適合性も高い。

規格JIS管種引張強さ想定圧力コスト
STPG370G3454電縫・シームレス370N/mm²以上〜25MPa
STS370G3455シームレスのみ370N/mm²以上〜42MPa
SUS316LG3459電縫・シームレス480N/mm²以上〜35MPa△(高い)

使用圧力ランクと配管選定

配管の最高使用圧力は、材料の引張強さだけでなく「肉厚・外径・安全率・溶接係数」を考慮して計算します。以下は目安です。

使用圧力推奨材料補足
〜10MPaSTPG370(電縫可)低圧回路・戻り配管・タンク周り
10〜25MPaSTPG370(シームレス)一般産業機械の主回路
25〜42MPaSTS370建設機械・高圧プレス・ピストンポンプ吐出側
腐食環境・食品SUS316L圧力に関わらず腐食リスクが高い環境では優先
注意電縫管(STPG370 E)は溶接部に微小欠陥が残ることがあります。高圧回路や繰り返し圧力変動が激しい用途(ポンプ脈動が直接かかるライン)には必ずシームレス管を使ってください。

腐食環境の判断基準

炭素鋼管(STPG・STS)は油圧作動油(鉱物油)の中では腐食しにくいですが、外面腐食と特殊作動油には注意が必要です。

環境対応
屋外・海岸から500m以内外面を亜鉛めっき+塗装、またはSUS316Lに変更
海岸から500m超・屋内STPG370+防錆塗装で十分
食品・飲料・医薬品製造設備SUS316L一択(法規制対応含む)
水-グリコール系作動油使用炭素鋼可。ただし亜鉛・カドミウムめっき継手は使用不可(溶解する)
リン酸エステル系作動油使用SUS316L推奨(炭素鋼を腐食する場合あり)

継手の選定

配管に合った継手を選ばないと、配管本体がどれだけ良くてもリークが起きます。

継手種類特徴適用圧力注意点
フレア継手(JIS B8360)管端をフレア加工して締める。作業が簡単〜25MPa繰り返し脱着で変形しやすい
食い込み式継手スリーブが管に食い込み密封。シール材不要〜35MPa正しいトルクで締めないと漏れる
溶接継手溶接で固定。最も信頼性が高い42MPa以上対応可分解不可。施工に技能が必要
ORFSフェース継手端面Oリングでシール。繰り返し分解に強い〜42MPaOリング交換が必要
注意水-グリコール系作動油の回路では、亜鉛・カドミウムめっきを施した継手は使えません。水-グリコールが亜鉛を溶かし、ゲル状スラッジを生成して弁・フィルタを詰まらせます。ステンレス継手またはめっきなし鋼製継手を選んでください。

高圧ホース(可動部用)の選定

ポンプ〜弁間など振動が伝わる部分や、シリンダのように動く部分には高圧ゴムホースを使います。

規格補強層最高使用圧力特徴
JIS B8360 1種Aワイヤブレード1層〜15MPa低圧・戻りライン用
JIS B8360 2種Aワイヤブレード2層〜25MPa標準的な主回路用
JIS B8360 3種ワイヤスパイラル4層〜40MPa高圧・建設機械用
トラブル事例:配管材料の取り違えによる管破裂
状況35MPaの高圧ラインにSTPG370の電縫管を使用。稼働開始から半年後、溶接部から亀裂が入り管が破裂した。
原因電縫管の溶接部に微小欠陥があり、繰り返し圧力変動(ポンプ脈動)で疲労亀裂が進展した。
対策25MPa超の高圧ラインはSTS370シームレス管に変更。ポンプ吐出側にはパルセーションダンパを追加して脈動を低減する。
配管材料選定チェックリスト
  • 最高使用圧力に対してSTPG370 / STS370の選択は正しいか
  • 高圧ライン(25MPa超)にシームレス管を指定したか
  • 屋外・海洋環境での外面腐食対策(めっき・塗装)は考慮したか
  • 水-グリコール系・リン酸エステル系作動油を使う場合、継手の亜鉛めっきを排除したか
  • 可動部(ポンプ周り・シリンダ側)には高圧ホースを使用しているか
  • 継手の締付けトルクを施工仕様書に明記したか

まとめ

  • 〜25MPaはSTPG370シームレス、25〜42MPaはSTS370が基本
  • 電縫管は脈動が激しい高圧ラインには使わない
  • 食品・医薬・海洋環境はSUS316L一択
  • 水-グリコール系作動油では亜鉛めっき継手が使えない点を必ず確認する
  • 可動部・振動吸収にはJIS B8360準拠の高圧ホースを組み合わせる

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