ニッケル価格の動向を調べてみたニッケル価格の動向を調べてみた:2026年、インドネシア増産と需要鈍化で17,000ドル台に軟着陸

ニッケル価格の動向を調べてみた:2026年、インドネシア増産と需要鈍化で17,000ドル台に軟着陸

LMEニッケルが2026年7月1日時点で16,287 USD/トンと、2026年のレンジ下限付近で推移している。5月初旬には19,600 USD/トン台まで上昇したものの、その後6月に月間-14%の急落を演じた。ニッケルの国内での体感価格はSUS304(ステンレス)の「ニッケルサーチャージ」として現れるため、「ニッケルが下がった=ステンレスが安くなる」という連鎖を実感している方も多いはずだ。この構造を整理してみた。

※ 本記事のデータは2026年7月1日時点の情報に基づきます。価格・為替は日々変動するため、最新情報は各情報源にてご確認ください。本記事は情報提供を目的としており、投資を推奨するものではありません。

現在の価格水準

LMEニッケル3カ月先物
約16,287 USD
/トン 2026年7月1日
SUS304国内価格目安(参考)
約700〜900 円
/kg Ni17,000ドル台水準
参考為替レート
145〜150 円
/USD 2026年上半期実勢

※ 2026年の値幅:最高18,879 USD/t(5月初旬)〜最低17,076 USD/t(6月下旬)、平均17,469 USD/t。7月1日の16,287ドルはレンジ下限を割り込んだ水準です。

ニッケルの国内価格はどう決まるか

ニッケルサーチャージの概算:LME(USD/t)× 為替(円/USD)÷ 1,000 = ニッケル換算コスト
例)16,287 USD × 148円 ÷ 1,000 ≒ 2,410円/kg(LMEニッケル換算)
※ 純ニッケルの直接調達は少なく、SUS304等のステンレス建値にサーチャージとして転嫁される形が国内では一般的。

ニッケルは銅と同じくLMEに公開市場があるが、国内での「体感」はステンレス鋼のニッケルサーチャージとして現れることが多い。純ニッケルを直接買う製造業者はめっき・電池材料などの一部に限られ、多くの場合はSUS304・SUS316の建値変動として認識される。「ニッケル価格を気にしているつもりが、実はサーチャージを気にしている」というのが実態だった。

価格推移(2024〜2026年)

LMEニッケル(USD/トン) Niサーチャージ目安(円/kg)×7換算
時期 LMEニッケル(USD/トン) 参考為替(円/USD) Niサーチャージ目安(円/kg) 主な出来事
2024年1月約16,500145〜150約248インドネシア増産で下落基調続く
2024年6月約18,000155〜160約299供給不安で一時反発
2024年9月約16,200143〜148約240中国ステンレス需要鈍化で軟化
2024年12月約15,500152〜158約247年間安値圏。供給過剰感が強い
2025年6月約15,800145〜150約237底値圏での横ばい推移
2025年12月約17,200150〜155約268EV電池向け需要期待で持ち直し
2026年1月約18,785148〜150約285インドネシア地滑り事故で急騰
2026年5月初旬約19,600146〜149約2952026年高値圏
2026年6月23日約17,501147〜150約264月間-14%。4月以来最低水準
2026年7月1日16,287148〜150約246レンジ下限割れ。中国需要鈍化圧力

価格を動かしている要因

① インドネシアの増産(最大の下押し要因)

世界最大のニッケル生産国インドネシアの増産が続き、供給過剰が慢性化している。2024年後半〜2025年の「ニッケル安・SUS304安」の時代はまさにこれが主因。2026年はマイニングクォータ(採掘割当)の強化が検討されており、供給側の不確実性が高まっている点が興味深かった。

② EV電池向け需要(硫酸ニッケル)

EV用リチウムイオン電池のNCA・NMC正極材に硫酸ニッケルが使われる。EV普及の加速がニッケル需要の長期的な押し上げ要因だが、LFP(リン酸鉄リチウム)電池の台頭でニッケル不要の電池が普及しており、「EV需要=ニッケル需要増」の方程式が崩れつつある点が読みにくさの本質。

③ 中国ステンレス需要の鈍化

中国は世界最大のステンレス消費国で、そのニッケル需要への影響は絶大。2026年は中国国内のステンレス取引が低調で、ニッケル塩(硫酸ニッケル等)の在庫消化が進まなかった。この軟調が6月の急落を加速させた。

④ インドネシア地滑り事故(1月の急騰)

2026年1月、インドネシアのニッケル生産施設で地滑り事故が発生し、一時的な供給不安から18,785 USD/トンまで急騰した。ただし供給障害が解消されると価格は反落。「有事プレミアム」がどれほど短命かを実感した出来事だった。

⑤ ドル高・FRB政策の影響

ドル建てのLME価格はドル高局面で割高感から売られやすい。2026年6月のFRB利上げ観測強化がドル高を招き、ニッケルを含む非鉄金属全般の売り圧力となった。為替と金融政策が直接価格に影響するため、金融ニュースの監視が欠かせない。

⑥ 採掘割当(クォータ)規制の動向

インドネシア政府によるマイニングクォータの強化・財政審査の強化が2026年に注目されている。割当が厳しくなれば供給が絞られ価格上昇要因となるが、実施時期・規模の不透明さが続いている。規制ニュースが出るたびに価格が反応する状況が続いている。

シナリオ別見通し(2026年下半期)

シナリオ LME(USD/トン) Niサーチャージ目安(円/kg) 主な前提条件
強気シナリオ 19,000〜22,000 289〜335 インドネシア採掘割当の厳格化+中国ステンレス需要回復。EV電池需要が加速。
基本シナリオ 15,000〜18,000 228〜274 現状水準での推移。供給過剰感が残るが中国需要が下支え。
弱気シナリオ 12,000〜15,000 182〜228 LFP電池普及でEV向けニッケル需要が想定以下に。中国需要本格失速の場合。

為替別・LME水準別の円換算表

LME水準(USD/トン) 円高(140円) 中立(148円) 円安(158円)
14,000(弱気)約1,960円/kg約2,072円/kg約2,212円/kg
16,287(現状)約2,280円/kg約2,410円/kg約2,573円/kg
20,000(強気)約2,800円/kg約2,960円/kg約3,160円/kg

※ 計算式:LME(USD/t)× 円/USD ÷ 1,000。ステンレスのNiサーチャージは組成比・各社計算式で異なります。SUS304のNi含有量は約8〜10%程度。

調達リスクへの備え(考え方の整理)

※ 以下は調達リスク管理の考え方を整理したものです。投資・財務アドバイスではありません。具体的な判断は専門家にご相談ください。
手法 概要・メリット ニッケル固有の注意点
ステンレス建値の仕組みを理解する Niサーチャージの計算式を把握することで、LME動向からステンレス建値の変動をある程度予測できる。 各ステンレスメーカーのサーチャージ計算式は独自。同じLME水準でもメーカーによって建値が異なる。
SUS316LからSUS304への代替検討 耐食性が許容範囲であれば、Ni含有量の多いSUS316L(12〜15%)からSUS304(8〜10%)への変更でNiコスト比率を下げられる。 用途・環境(塩水・酸)によってはSUS316Lが必須。設計段階での判断が重要。
めっき用ニッケルの長期契約 電解ニッケル・ニッケルめっき液の大口ユーザーはメーカーと長期価格契約を結ぶケースがある。 LME連動フォーミュラ契約の場合、固定期間の設計が重要。インドネシア政策変更等の突発要因に注意。
電池材料としての動向注視 LFP電池普及によってニッケル需要の伸びが鈍化するシナリオは価格下押しになり、調達コスト低減の機会になり得る。 EV電池材料(硫酸ニッケル)と工業用ニッケルは市場が異なるため、用途別に需給を分けて考える必要がある。

調べてみてわかったこと

ニッケルを調べて最初に驚いたのは、日本国内での「体感価格」がステンレスのサーチャージとして現れるという構造だった。純ニッケルを直接扱う機会は限られており、多くの製造業者はSUS304の建値が上がったり下がったりする形でニッケル相場の影響を受けている。2026年の最大のトピックは「インドネシア増産による供給過剰」と「LFP電池台頭によるEV向け需要への疑問符」のダブルパンチで、ニッケルが$20,000超えを維持できなかった構造的理由がここにある。それでも1月の地滑り事故で1日で数百ドル動くような市場であり、「供給不安ニュース」へのアンテナを張り続けることがニッケル調達担当者には欠かせないと感じた。

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