延性破面に現れるディンプル(dimple)は、金属内部でボイドが核生成し、成長・合体しながら破断に至った証拠です。ディンプルの形状・サイズ・向きを読むことで、荷重の種類と方向まで特定できます。
延性破面とは何か
延性破断(ductile fracture)は、材料が十分な塑性変形を伴いながら破断するモードです。引張試験のくびれ破断が典型例で、破断前に大きな変形エネルギーを吸収します。破面をSEMで観察すると、大小の椀状(碗状)凹み——ディンプル——が密に並んだ模様が見られます。これが延性破面の決定的な特徴です。
延性破面が確認できた場合、材料自体の脆化は起きておらず、「破断時に設計応力を超える荷重が作用した」ことを意味します。ただし疲労破断の最終破断域にも延性ディンプルが現れるため、破面全体のゾーン分布を確認することが重要です。
ディンプル形成のメカニズム
ディンプルは以下の3段階で形成されます。
① 核生成:介在物(MnS・Al₂O₃など)、析出物(炭化物・窒化物)、粒界などの応力集中部でマトリクスと粒子の界面剥離または粒子割れが起き、微小ボイドが生成します。
② 成長:引張応力によりボイドが球状に成長します。塑性変形が進むほどボイドは大きくなり、周囲のマトリクスが薄くなっていきます。
③ 合体・破断:隣接するボイド間の材料が局所的に薄くなり(ネッキング)、最終的に内部で破断してボイド同士が合体します。この繰返しが破面全体に波及して破断が完了します。
ディンプルの形状と荷重の関係
ディンプルの形状は作用した荷重の種類を反映します。破面を観察する際に必ず確認すべき点です。
| ディンプルの形状 | 対応する荷重 | 観察上の特徴 |
|---|---|---|
| 等軸ディンプル(equiaxed) | 一方向引張 | 円形または略正円形、サイズが比較的均一 |
| 伸長ディンプル(elongated) | せん断・ねじり | 一方向に引き伸ばされた楕円形、両破面で対向 |
| ティアリング型(tearing) | 引き裂き(混合モード) | 開口部が破断方向に向く、非対称形状 |
ディンプルサイズが示す情報
ディンプルの大きさは材料の清浄度(介在物・析出物の量と分布)と荷重速度を反映します。
- 大きいディンプル:介在物が少なく清浄な材料、または低速荷重。ボイドが大きく成長する時間があった。
- 小さいディンプル:介在物・析出物が多い材料、または高速・衝撃荷重。ボイドが多数発生して早期合体。
- 大小混在:大きな介在物と微細析出物が混在する材料に多い。大ディンプルの底に小ディンプルが観察される場合あり。
延性破面が確認できたときの対処
延性破面の確認は「材料が正常に機能していた」ことの証拠でもあります。問題は荷重側にあります。
- 破面の全域がディンプルか、一部にビーチマーク・リバーマークが混在しないか確認
- ディンプルの形状から荷重の種類(引張/せん断/混合)を特定する
- ディンプルのサイズ分布から材料の清浄度を評価する
- 破断時の実荷重と設計荷重を比較する(過負荷の確認)
- 材料の降伏強度・引張強度と実荷重の関係を検証する
まとめ
- 延性破面はディンプルパターンが特徴。介在物周辺でボイドが核生成・成長・合体して破断する。
- 等軸ディンプル=引張荷重、伸長ディンプル=せん断・ねじり荷重。形状から荷重方向を読む。
- ディンプルサイズは材料の清浄度と荷重速度を反映する。大=清浄/低速、小=介在物多/高速。
- 延性破面=材料は正常。問題の根本原因は荷重側(過負荷・設計誤り・使用条件逸脱)にある。
- 疲労破面の最終破断域にも延性ディンプルが現れるため、破面全体のゾーン分布を必ず確認する。
金属が破断したとき、破面の形状には破壊の原因が刻まれています。本シリーズでは4種類の破面パターンを図解で解説します。

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