鋼材の溶接性を数値で評価する指標が「炭素当量(Ceq)」と「溶接割れ感受性組成(Pcm)」です。同じ材料名称でもミルシートの成分が異なればCeqは変わり、予熱が必要かどうかの判断が変わります。成分を入力するだけでCeqとPcmを瞬時に計算し、溶接割れリスクを判定するツールです。
計算ツール
▼ 各元素の重量%を入力してください(空欄は0として計算)
よく使う鋼種のプリセット:
2つの計算式の違い
| 指標 | 計算式 | 適用範囲 | 判定基準 |
|---|---|---|---|
| Ceq(IIW式) | C + Mn/6 + (Cr+Mo+V)/5 + (Ni+Cu)/15 | C ≥ 0.18%の一般構造用・機械構造用鋼 | 0.40未満:予熱不要目安 0.40〜0.50:条件次第 0.50超:予熱必要 |
| Pcm(Ito-Bessyo式) | C + Si/30 + Mn/20 + Cu/20 + Ni/60 + Cr/20 + Mo/15 + V/10 + 5B | C ≤ 0.15%の低炭素高張力鋼(HT鋼) | 0.25未満:低予熱可 0.25〜0.30:条件次第 0.30超:予熱必要 |
IIW式はC量が多い鋼種に向き、Pcmは低炭素高張力鋼(TMCP鋼・HT490・HT590など)に適用されます。どちらを使うかはC量と規格書の指定に従います。
予熱温度の目安(Ceqベース)
| Ceq | 予熱温度目安 | 代表的な鋼種 | 溶接工程での注意 |
|---|---|---|---|
| < 0.40 | 不要(通常) | SS400、SB410、SM490A | 板厚25mm超・低温環境は要確認 |
| 0.40〜0.45 | 50〜100°C | SM490B・C、HT50 | 板厚・入熱量に応じて判断 |
| 0.45〜0.50 | 100〜150°C | S35C〜S45C、SMA490 | 予熱後パス間温度管理も必要 |
| 0.50〜0.60 | 150〜200°C | SCM440、SCr440、SM570 | 後熱処理(SR)も検討 |
| > 0.60 | 200°C以上 | SKS、SKD系工具鋼 | 溶接修理は専門業者に依頼 |
注意予熱温度は板厚・溶接入熱量・拘束度・雰囲気温度によっても変わります。特に低温環境(5°C未満)では1ランク上の予熱が推奨されます。構造物の溶接設計では材料規格書と溶接施工要領書(WPS)に従って判断してください。
「SS400だから予熱不要」で溶接割れが発生
状況板厚32mmのSS400材(JIS G 3101)を溶接した配管サポートで、溶接後24時間以内に熱影響部(HAZ)に割れが発生した。
原因使用したコイルのミルシートを確認すると C = 0.22%、Mn = 1.52% で Ceq = 0.22 + 1.52/6 ≈ 0.47。SS400の上限成分付近の材料で、板厚32mm・外気温8°Cという条件では低温割れが発生するCeqに達していた。「SS400は予熱不要」という思い込みで管理されていた。
対策受入時にミルシートのCeqを計算(または業者に確認)する手順を追加。板厚25mm超・外気温10°C未満の場合はCeq 0.40超で予熱100°Cを義務付けた。
まとめ
- 炭素当量CeqはIIW式:C + Mn/6 + (Cr+Mo+V)/5 + (Ni+Cu)/15で計算
- 低炭素高張力鋼にはPcm(Ito-Bessyo式)を使う
- Ceq 0.40が予熱要否の一般的な目安——ただし板厚・温度・拘束度で補正が必要
- 「SS400=予熱不要」は成立しない。ミルシートの成分から毎回計算することが重要


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