【便利ツール】電気抵抗率・導電率 比較ツール:材料選定に使える一覧

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「この材料、どれくらい電気を通すのか」を調べるとき、電気抵抗率(ρ)と導電率(σ)が混在していて換算に手間どった経験はないだろうか。このページでは主要金属17材料の数値を一覧表とグラフで示し、材料選定の実務判断に使えるかたちで整理する。

電気抵抗率と導電率の換算式

電気抵抗率(ρ)と導電率(σ)は逆数の関係にある。

換算式 σ(S/m)= 1 / ρ(Ω·m)
単位変換:ρ の単位が μΩ·cm のとき、σ(%IACS)= 1.7241 / ρ(μΩ·cm)× 100
(1.7241 μΩ·cm は国際標準焼鈍軟銅の電気抵抗率)

%IACSとは何か

%IACS(International Annealed Copper Standard)は、国際標準焼鈍軟銅を100%とした導電率の相対値。銅の電気抵抗率 1.7241 μΩ·cm を基準に設定されており、アルミニウムは約 2.82 μΩ·cm なので 61%IACS 程度になる。100%IACEを超える材料(銀など)も存在する。

主要金属 電気抵抗率・導電率一覧(室温 20℃)

材料名 電気抵抗率(μΩ·cm) 導電率(%IACS) 用途メモ
Ag(銀)1.59108高周波コネクタ・接点・高級ケーブル
Cu(銅)1.72100電線・バスバー・プリント基板配線
Au(金)2.4471コネクタめっき・ボンディングワイヤ
Al(アルミ)2.8261送電線・バスバー・放熱基板
Mo(モリブデン)5.2033高温電極・半導体スパッタターゲット
W(タングステン)5.6530フィラメント・電極・超硬バインダ
Zn(亜鉛)5.9229めっき・ダイカスト・電池負極
黄銅 C36046.3027端子・コネクタ・精密切削部品
Ni(ニッケル)6.8425バッテリ電極・耐食めっき
Fe(純鉄)9.7118電磁鋼板(低抵抗グレード)
Pt(白金)10.616熱電対・測温抵抗体(Pt100)
Sn(すず)11.016はんだ・めっき(耐食)
炭素鋼(S45C相当)17.79.7一般構造・機械部品(導電用途少)
SUS30472.02.4耐食構造・食品・医療(導電用途×)
Ti(チタン)42.04.1軽量構造・生体材料(導電用途少)
鉛(Pb)20.68.4蓄電池電極・放射線遮蔽
インコネル 625129.01.3高温耐食・ガスタービン(導電用途×)

SUS304の電気抵抗率は銅の約42倍。導電用途でステンレスを選ぶと配線損失が極めて大きくなるため、配線・端子・バスバーへの適用は避ける。

電気抵抗率 横棒グラフ(対数スケール)

下記グラフは各材料の電気抵抗率を対数スケールで比較したもの。銀〜インコネルで2桁以上の差があるため対数表示が適切。

温度係数の基本知識

金属の電気抵抗率は温度上昇とともに増加する(正の温度係数)。概算式:

温度補正式 ρ(T) ≈ ρ₀ × [1 + α × (T − 20℃)]
α:温度係数(1/℃) 例:Cu ≒ 0.00393、Al ≒ 0.00403、Ni ≒ 0.0069

たとえば銅バスバーが 80℃ に達した場合、電気抵抗率は室温比で約 1.24倍に上昇する。大電流部品の熱設計では室温値だけでなく最高使用温度での抵抗率を用いること。

材料選定の判断軸

導電性を最優先する場合

第1候補:Cu(コストと導電性のバランスが最良)。重量制約が厳しい場合はAlへ。Agは高周波・接点・医療用途など極めて限定的な場面で採用。Auはめっきで使い、バルク材は事実上使わない。

コストを優先する場合

Al(アルミ)は銅の約3分の1の価格(重量単価)で導電率は 61%IACS。電力ケーブルや送電線ではAlが主流。コストを下げたいが導電率も必要な場合はAlが第1候補。

耐食性も必要な場合

SUS304・インコネルは導電率が極めて低く配線材には不適。耐食かつ導電が必要ならAuめっきCu、またはNiめっきCuを検討。海塩環境でのバスバーはAl合金A6061にアルマイト処理が現実解。

高温環境(200℃以上)

Wは高融点で高温導電部品に適するが加工が難しい。Moも同様。通常の電線用途では PTFE被覆銅線(200℃グレード)で対応し、金属材料の変更より絶縁被覆の選定で解決することが多い。

実務メモ:銅 vs アルミの選び方

比較項目 Cu(銅) Al(アルミ)
導電率(%IACS)10061
密度(g/cm³)8.962.70
同導電量の断面積比1.0約 1.64倍
同導電量の重量比1.0約 0.50(半分以下)
価格(重量単価目安)高め銅の約1/3
接続部の注意点標準的なクランプで接続可酸化皮膜・電食・クリープに注意

同じ電流を流すためにAlは銅より 1.64倍の断面積が必要だが、重量は約半分で済む。EV・航空機・送電線のように重量が直接コストに響く用途ではAlが有利。一方、狭スペースで断面積を確保しにくい制御盤内配線や精密機器ではCuが適している。

注意アルミ導体を鋼または銅の端子に直接接続すると異種金属接触腐食(ガルバニック腐食)が起きる。Al専用の圧縮端子または錫めっき銅端子を使用し、接触面にコンパウンドを塗布すること。締付け後のクリープによるトルク低下にも注意が必要で、定期的な増し締めを行程に組み込む。
トラブル事例:バスバー材料の誤選定で配線損失が予算超過
状況大電流(500A)バスバーの調達先変更時に、誤ってSUS304板材を発注。通電試験で発熱が著しく、電圧降下も許容値(0.2V)を大きく超えた。
原因SUS304の電気抵抗率は 72 μΩ·cm(銅の約42倍)。銅板と同寸法・同厚では配線抵抗が42倍になり、500Aでの電力損失は P = I²R で計算すると設計値の42倍に達した。
対策C1100(無酸素銅)に変更。調達仕様書に電気抵抗率の上限値(≤ 1.80 μΩ·cm at 20℃)を明記し、材質証明書で確認する工程を追加した。
材料選定チェックリスト
  • 使用温度範囲での電気抵抗率を確認したか(温度補正式適用)
  • 断面積・重量・価格のトレードオフを定量比較したか
  • 異種金属接続がある場合、電食対策を検討したか
  • %IACSと μΩ·cm の単位換算が正しく行われているか
  • 大電流部品の場合、許容電流・温度上昇を設計に織り込んだか
  • 調達仕様書に電気抵抗率の上限値を数値で明記したか

まとめ

  • 電気抵抗率(μΩ·cm)と導電率(%IACS)は逆数関係。基準は銅の 1.7241 μΩ·cm = 100%IACS。
  • 主要導電材料の順位:Ag > Cu > Au > Al > Mo > W。用途の大半はCuかAlで解決できる。
  • SUS304・インコネルは導電率が銅の数十分の一以下。配線・バスバーへの適用は禁物。
  • 銅とアルミの選択は「重量が重要か・断面積に余裕があるか・接続部の電食管理ができるか」で判断する。
  • 温度が上昇すると抵抗率は増加。大電流設計では最高使用温度での値を使う。

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