アルミ合金1000系〜7000系の選び方:強度を上げるほど溶接性と耐食性が落ちる

アルミニウム合金

アルミ合金は1000系〜7000系という系統に分かれ、系統ごとに主合金元素・強化機構・強度・耐食性・溶接性が入れ替わる。厄介なのは「強度が高い系統ほど耐食性や溶接性が落ちる」という逆相関があることで、強度だけを見て2000系や7000系を選ぶと、屋外で腐食したり溶接部が割れたりする。系統ごとの特徴と、実際に起きた選定ミスを見ていく。

アルミ合金系統一覧:全7系統の早見表

系統主合金元素熱処理引張強さ目安代表グレード主な用途
1000系(純Al)不可55〜130 N/mm²A1050, A1100導電材・反射板・化学容器
2000系Cu(銅)可(T4/T6)350〜500 N/mm²A2017, A2024航空機・精密切削部品
3000系Mn(マンガン)不可100〜180 N/mm²A3003, A3104飲料缶・屋根材・熱交換器
4000系Si(ケイ素)限定的A4043, A4047溶接ワイヤ・ろう材・鋳物
5000系Mg(マグネシウム)不可175〜350 N/mm²A5052, A5083板金・船舶・圧力容器
6000系Mg + Si可(T6)200〜300 N/mm²A6061, A6063押出形材・建材・構造フレーム
7000系Zn + Mg(+ Cu)可(T6/T73)450〜570 N/mm²A7075, A7050航空宇宙・スポーツ・防衛

系統別 引張強さの比較(代表調質)

3000系・4000系についての補足

3000系(Al-Mn): マンガン添加で成形性と耐食性を確保した系列。飲料缶(A3104)・屋根材・熱交換器のフィン材(A3003)に使われる。強度は1000系より少し高い程度だが、プレス成形性が非常に良い。

4000系(Al-Si): ケイ素添加で融点を下げた系列。MIG/TIG溶接用フィラーワイヤ(A4043)やろう付け用合金(A4047)として使われる。単体の構造材としてはあまり使われない。

代表グレード詳細一覧

グレード系統代表調質引張強さ (N/mm²)耐食性溶接性特徴・用途
A10501000系O55〜95最高容易反射板・化学容器・電解箔
A11001000系O75〜105最高容易深絞り容器・導電材・バスバー
A20172000系T4≧390困難ジュラルミン・精密切削
A20242000系T3≧440困難超ジュラルミン・航空機外皮
A30033000系O95〜130良好熱交換器フィン・屋根材
A50525000系H32215〜265良好板金・筐体・輸送機器
A50835000系O275〜350良好船舶・LNGタンク・圧力容器
A60616000系T6≧260良好可能構造材・機械フレーム・治具
A60636000系T5≧150良好可能サッシ・建材・押出形材
A70757000系T6≧525困難航空機・自転車・スポーツ

JIS・ASTM 規格対応早見表

JISASTM/AAEN
A10501050EN AW-1050A
A20172017EN AW-2017
A50525052EN AW-5052
A60616061EN AW-6061
A70757075EN AW-7075

系統選定で実際に起きたトラブル

屋外パネルにA2024を使って1年で腐食が広がった
状況強度優先でA2024(2000系・T3)を屋外設置の意匠パネルに採用した。表面塗装はしていたが、施工の傷や端面から1年ほどで白色の腐食生成物が広がり、パネル交換が必要になった。
原因2000系はCu(銅)添加で強度は出るが、耐食性は7系統の中で最も低い部類に入る。Cuが析出することで局部電池が形成されやすく、塗膜が傷つくとそこから腐食が一気に進む。屋外・無塗装または部分塗装での長期使用には本来向いていない系統だった。
対策屋外露出部はA5052(5000系)に変更。強度がどうしても必要な部位だけA2024を残し、全面を陽極酸化処理してから塗装する仕様に切り替えた。以降、同じ不具合は出ていない。
A7075のTIG溶接部に高温割れが発生した
状況高強度が必要な治具フレームにA7075(7000系)を採用し、通常のTIG溶接で組み立てたところ、溶接ビード直下に割れが発生し全数不良になった。
原因7000系はZn・Mg・Cuを多く含み、溶接時の凝固過程で低融点の共晶組織が粒界に残りやすく、高温割れ(凝固割れ)を起こしやすい。7000系はそもそも「溶接構造」を前提にした系統ではなく、ボルト締結や機械加工での接合が基本になる。
対策溶接構造そのものを見直し、A6061(6000系)にボルト締結の設計へ変更した。どうしても7000系の溶接が必要な場合は、母材と近い組成の専用フィラーと予熱管理で高温割れリスクを下げるが、それでも溶接品質の安定性は6000系に劣る。

系統の選び方——判断フロー

耐食性・成形性優先 → 1000系・3000系

強度を必要としない反射板・容器・熱交換器フィンなら1000系・3000系で足りる。強度がわずかでも必要になった時点で5000系・6000系を検討する。

板金・溶接構造・屋外 → 5000系

耐食性と溶接性を両立したいなら5000系。船舶・タンク・屋外板金はA5052・A5083が事実上の標準。強度は6000系よりやや高いが熱処理では上げられない。

構造フレーム・押出形材 → 6000系

T6処理で強度を確保でき、溶接も可能な万能系統。建材・機械フレーム・治具など「そこそこの強度と加工性の両方が要る」場面の第一候補。

最高強度が必要・溶接しない → 2000系・7000系

航空機・レース用品など重量当たりの強度を極限まで求める用途向け。耐食性・溶接性は犠牲になるため、屋外露出や溶接構造を前提にしない設計にする。

アルミ合金系統 選定チェックリスト
  • 屋外・湿潤環境で使うか確認した(2000系・7000系は塗装・陽極酸化なしでの長期屋外使用を避ける)
  • 溶接構造かどうか確認した(溶接するなら5000系・6000系を優先)
  • 必要な強度から系統を決め、その中でグレード・調質を決めた(強度から逆算せず系統だけで選んでいないか)
  • 異種金属接触(アルミ×鋼・アルミ×SUS)がある場合は絶縁対策を検討した

まとめ

  • アルミ合金は1000〜7000系に系統分類され、主合金元素・強度・耐食性・溶接性・熱処理可否が系統ごとに入れ替わる。
  • 強度の高い順は7000系 > 2000系 > 6000系 > 5000系 > 3000系 > 1000系が目安。
  • 耐食性・溶接性の良い順はほぼ逆で、1000系 > 5000系 > 6000系 > 3000系 > 2000系 ≒ 7000系が目安。
  • 2000系・7000系は強度は出るが屋外無塗装・溶接構造には向かない。5000系・6000系は強度と加工性のバランスで選ばれることが多い。
  • 設計では「系統を決める→グレードを決める→調質を決める」の3ステップで選定する。

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