架台や治具を作るとき、図面に材料の指定がなければ鋼材屋はだいたいSS400を持ってくる。それくらい「デフォルト材料」として使われているが、意外と知られていないのが「SS400には炭素量の規定がない」という点だ。普通に溶接している分には問題ないが、ロットによって炭素量にばらつきがあり、C量が高い材料に当たると溶接部が硬化して割れることがある。この記事ではSS400の規格の中身と、知っておくべき落とし穴を説明する。
記号の読み方
「SS」はSteel Structure(一般構造用圧延鋼材)の略で、「400」は引張強さの下限値400 N/mm²を指す。JIS G 3101で規定される、いちばん基本的な鋼材規格だ。
成分と機械的性質
SS400の最大の特徴:炭素量の規定がない。
引張強さと降伏点は規定されているが、炭素量(C%)はJIS規格上の制限がない。実際に流通しているSS400のC量は0.17〜0.23%程度が多いが、これは実態であって保証値ではない。ロットによって0.25%近いものが混ざることがある。
引張強さと降伏点は規定されているが、炭素量(C%)はJIS規格上の制限がない。実際に流通しているSS400のC量は0.17〜0.23%程度が多いが、これは実態であって保証値ではない。ロットによって0.25%近いものが混ざることがある。
| 性質 | SS400(板厚16mm以下) |
|---|---|
| 引張強さ | 400〜510 N/mm² |
| 降伏点(耐力) | 245 N/mm² 以上 |
| 伸び | 21〜26%(板厚による) |
| 炭素量(C) | 規定なし(実態 0.17〜0.23%) |
| シャルピー衝撃値 | 規定なし |
SSグレードの比較
| 規格 | 引張強さ(N/mm²) | 降伏点(N/mm²) | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| SS400 | 400〜510 | 245以上(16mm以下) | 架台・フレーム・仮設材・一般構造 |
| SS490 | 490〜610 | 285以上 | 橋梁・高強度が求められる構造物 |
| SS540 | 540以上 | 400以上 | 特殊構造・高荷重部位 |
SS400 vs SM400:何が違うか
| 項目 | SS400 | SM400 |
|---|---|---|
| 規格 | JIS G 3101 | JIS G 3106 |
| 炭素量 | 規定なし | C≦0.20%(A材) |
| 炭素当量(Ceq) | 規定なし | 規定あり(溶接性の指標) |
| シャルピー衝撃値 | 規定なし | 規定あり(低温靱性の保証) |
| 溶接性 | 保証されない | 保証される |
| コスト | 安い | やや高い |
| 使う場面 | 溶接性不問の一般構造・架台 | 橋梁・圧力容器・溶接重要構造 |
海外規格との対応
| JIS(日本) | ASTM(米国) | EN(欧州) | GB(中国) |
|---|---|---|---|
| SS400 | A36 | S235JR | Q235B |
海外規格と「大体同じ」として扱われることが多いが、炭素当量や衝撃試験の有無など細かい違いがある。海外調達品を設計仕様のSS400代替として使う場合は成分証明書で確認したほうがいい。
トラブル事例
SS400を溶接したら熱影響部が硬化して割れた
状況搬送装置の鉄骨フレームをSS400で製作。溶接後に曲げ荷重が加わる部位でビード近傍に割れが発生。溶接条件は以前と変えていなかった。
原因成分証明書を確認したところ、当該ロットのC量が0.24%と高めだった。SS400は炭素量に上限規定がないため、ロット間でC量にばらつきがある。C量が高いと熱影響部(HAZ)が硬化しやすく、急冷条件が重なると低温割れが起きる。
対策溶接前予熱(50〜100℃)を追加してHAZの硬化を抑制。根本的な対策として溶接性保証が必要な部位はSM400に変更した。以後は材料受入れ時にミルシートのC量を確認するようにした。
発注書のSM400がSS400に読み替えられて納入された
状況橋梁補修工事の仮設材としてSM400を発注したが、納入されたのはSS400だった。鋼材屋が「強度は同じ」と判断して代替品を持ってきた。現場で溶接後に靱性不足による問題が懸念され、全材差し替えになった。
原因SS400とSM400は引張強さが同等のため「互換品」と誤解されやすい。しかしSM400はシャルピー衝撃値と炭素当量の規定があり、低温靱性と溶接性が保証されている。SS400にはそれがない。
対策発注書に「代替品不可・ミルシート提出必須」を明記。材料が届いたらJIS規格番号とグレードをミルシートで照合する手順を工程に組み込んだ。
用途別カード
建設・鉄骨フレーム
H形鋼・アングル・プレートなど。建築基準法上の重要構造部材ではSN材が求められるが、二次部材・仮設はSS400が主流。
機械架台・装置フレーム
生産設備の架台は溶接するが荷重条件が厳しくなく、コスト重視でSS400が使われる。ただし振動・繰り返し荷重が大きい場合はSM400で靱性を確保した方が安全。
ブラケット・補強プレート
取付金具や補強プレートは剛性重視で溶接強度の余裕が大きい部位。SS400で十分なケースがほとんど。
冶具・搬送ラック・パレット
コストと加工性が最優先の仮設・工場内設備。「なんでもSS400」になりやすい用途で、これは正しい選択。
選定チェックリスト
SS400でいいか・他材料に変えるべきか
- ☐ 溶接するが非重要構造・架台・治具 → SS400でよい
- ☐ 溶接する重要構造・橋梁・圧力容器 → SM400かSM490
- ☐ 低温環境(0℃以下)での溶接構造 → SM400B以上(衝撃値規定あり)
- ☐ 焼入れ・調質が必要な機械部品 → S45CかSCM440
- ☐ 耐震設計が必要な建築構造物 → SN400(降伏点に上限規定あり)
- ☐ 薄板・プレス加工 → SPCC(冷延)かSPHC(熱延)
- ☐ ミルシートのC量確認が必要 → 溶接で問題が出たロットは証明書を取り寄せる
SS400を使う前に知っておくこと
- SS400は引張強さと降伏点を保証するが、炭素量とシャルピー衝撃値は規定がない。「安くて加工しやすい」反面、溶接性は保証されていない。
- 溶接重要構造・低温環境・耐震用途にはSS400は使わない。それぞれSM400・SN400が正しい選択。
- SS400とSM400は強度が同等のため取り違えやすい。発注時に規格番号を明記し、ミルシートで確認する習慣をつけるだけで多くのトラブルを防げる。


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