アルミニウム価格の動向を調べてみた:2026年、LME急落とNSP560円の「ねじれ」が示すもの

価格動向

アルミニウム価格の動向を調べてみた:2026年、LME急落とNSP560円の「ねじれ」が示すもの

2026年6月、LMEアルミニウムが月間-17%という2008年以来最大の下落を記録し、7月1日時点で3,097 USD/トンまで下げた。一方で国内のNSP(新標準地金価格)は2026年4〜6月期が560円/kgと近年最大の上昇幅だった。「LMEが急落しているのに国内価格は高い」——この一見矛盾した状況が、NSPの3カ月タイムラグという仕組みから生まれている。数字を丁寧に追うと、アルミ価格の読み方がガラッと変わった。

※ 本記事のデータは2026年7月1日時点の情報に基づきます。価格・為替は日々変動するため、最新情報は各情報源にてご確認ください。本記事は情報提供を目的としており、投資を推奨するものではありません。

現在の価格水準

LMEアルミニウム3カ月先物
約3,097 USD
/トン 2026年7月1日
国内NSP(2026年4〜6月期)
560 円
/kg (+60円・近年最大の上昇幅)
参考為替レート
145〜150 円
/USD 2026年上半期実勢

※ NSP(New Standard Price)は四半期ごとに改定。2026年7〜9月期は600円/kg超も予測されていましたが、6月のLME急落を受けて改定幅が変わる可能性があります。LME急落の影響は約3カ月後のNSPに反映されます。

国内アルミ価格(NSP)はどう決まるか

NSP計算の仕組み:直前3カ月の月間平均LME地金価格の平均値 → 1の位を四捨五入 → +10円(エクストラ)
例)2025年10月〜12月のLME平均が高かった → 2026年1〜3月期のNSPが高くなる
※ LMEが「今」下がっても、NSPへの反映は約3カ月後。この「遅効性」がアルミ調達の読み方のポイント。

NSPの仕組みを知ったとき、「3カ月前のLME価格が今の調達コストを決める」という構造の面白さに気づいた。銅の建値が月9〜10回更新されるのとは対照的で、アルミは四半期単位で価格が固定される。6月のLME急落がNSPに影響するのは7〜9月期改定のタイミング——つまり少なくとも数か月は現在の560円/kgが続く可能性が高い。「LMEを見てもすぐには安くならない」という点が、アルミ調達者には特に重要な視点だった。

価格推移(2024〜2026年)

LMEアルミ(USD/トン) 国内NSP(円/kg)×5換算
時期 LMEアルミ(USD/トン) 参考為替(円/USD) 国内NSP(円/kg) 主な出来事
2024年1〜3月期約2,200145〜150約340LME下落局面。NSPはタイムラグで高止まり
2024年4〜6月期約2,550153〜160約360中東リスクで上昇。円安でNSPも上昇
2024年7〜9月期約2,400143〜155約390LME下落だがNSPは前期平均反映で高め
2024年10〜12月期約2,600152〜158約380中国生産上限到達の懸念で持ち直し
2025年1〜3月期約2,700148〜155約420中東供給混乱の思惑で上昇
2025年4〜6月期約2,900145〜150約500LME高騰がNSPに反映。前期比大幅上昇
2025年7〜9月期約2,700145〜150約460NSP小幅下落。LME軟化の反映
2025年10〜12月期約2,800150〜155約470横ばい圏での推移
2026年1〜3月期約3,500148〜152約530LME急騰(中国生産上限・中東混乱)
2026年4〜6月期3,500→3,097(急落)145〜150560(確定)NSPは前期LME高値を反映し近年最大上昇。LMEは6月に急落

価格を動かしている要因

① 中国の生産上限(4,500万トン)到達

中国政府が設けた年間アルミ生産上限4,500万トンへの到達が、供給増加に歯止めをかける構造変化として注目されている。これが2026年前半のLME上昇の主因の一つで、国内NSPが560円/kgまで上昇した背景にある。

② 中東紛争による精錬所供給途絶

中東地域(GCC諸国)の精錬所からの供給が不安定になったことが、2026年前半のLME上昇を加速させた。アルミ精錬は電力多消費型産業で、産地の政情・エネルギーコストが直接影響する。

③ LME在庫の記録的低水準

LMEアルミ在庫が記録的低水準となったことが、需給ひっ迫感と価格を押し上げた。在庫の絶対量が少ないと、突発的な需要増に対応できないリスクプレミアムが価格に乗りやすい。

④ インドネシア・中国の生産増加(6月急落の主因)

インドネシアの新規精錬能力稼働と中国の増産が、供給増加観測を強め6月の急落を招いた。ドル高・FRB利上げ観測が重なり、月間-17%という2008年以来の大幅下落となった点が印象的だった。

⑤ EU炭素国境調整措置(CBAM)

EUのCBAM(Carbon Border Adjustment Mechanism)が欧州向けアルミ輸出コストを押し上げる政策的要因として働いている。炭素集約型の中国・ロシア産アルミには追加コストがかかり、産地別の価格差が生まれている。

⑥ EV・再エネ・航空機需要

EV車体の軽量化(アルミボディ)、太陽電池パネルのフレーム・架台、次世代航空機の機体材料として安定した需要基盤がある。長期的な需要成長は確実で、供給の波があっても価格の底を支える構造的な需要層になっている。

シナリオ別見通し(2026年下半期)

シナリオ LME(USD/トン) 国内NSP目安(円/kg) 主な前提条件
強気シナリオ 3,500〜4,000 580〜640(7〜9月期以降) 中国生産上限の継続+中東供給混乱の長期化。LMEが急落から反発する場合。
基本シナリオ 2,800〜3,300 510〜560(7〜9月期に小幅下落) 6月急落を一定程度反映してNSPが下がるが、大幅下落にはならない現状維持型。
弱気シナリオ 2,200〜2,700 430〜490(7〜9月期以降) インドネシア・中国の増産が続きLME低迷が長期化。景気後退で需要も失速。

為替別・LME水準別の国内換算表(NSP参考)

LME水準(USD/トン) 円高(140円) 中立(148円) 円安(158円)
2,500(弱気)約350円/kg約370円/kg約395円/kg
3,097(現状LME)約433円/kg約458円/kg約489円/kg
3,700(高値水準)約518円/kg約548円/kg約585円/kg

※ 計算式:LME(USD/t)× 円/USD ÷ 1,000。NSPはこの換算値をもとに直前3カ月平均+エクストラ10円で算出。実際のNSPとは異なります。

調達リスクへの備え(考え方の整理)

※ 以下は調達リスク管理の考え方を整理したものです。投資・財務アドバイスではありません。具体的な判断は専門家にご相談ください。
手法 概要・メリット アルミ固有の注意点
NSPタイムラグを活用した先読み LMEの動向から3カ月後のNSPを概算できる。「今LMEが下がった=3カ月後にNSPが下がる」と読んで発注タイミングを調整できる。 NSP改定は四半期1回。改定直後の3カ月間は価格固定なので、改定前後のタイミングが重要。
四半期切り替えタイミングの発注集中 NSPが下がる四半期の初月(1月・4月・7月・10月)に発注を集中させることでコスト低減を図る。 同じ考えのユーザーが集中するため、納期が長くなるリスクがある。在庫バッファとのバランスが必要。
アルミスクラップ(二次地金)の活用 純アルミ1次地金より二次合金地金(ADC12等)は価格が低く、鋳物・ダイカスト用途では積極利用できる。 不純物含有量の管理が必要。製品品質要求が厳しい用途(航空・自動車)では使用制限がある。
代替材料の検討 軽量化目的の一部用途では、マグネシウム合金・CFRP・高張力鋼(ハイテン)への代替が選択肢になる。 アルミは加工性・コスト・リサイクル性のバランスが優れており、代替材はいずれかで劣る場合が多い。用途を絞って検討する。

調べてみてわかったこと

アルミ価格の調査で最も「なるほど」と思ったのはNSPの3カ月タイムラグだった。「LMEが急落しているのに国内価格が高い」という2026年6月の状況は、このタイムラグそのものだった。逆に言えば、「今LMEが下がっているなら、3カ月後のNSPが下がる」という予測を先行して発注計画に組み込める可能性もある。銅のように毎日変動する建値と違い、四半期単位で価格が固定されるアルミは、計画購買と相性が良い金属だとわかった。LMEの6月急落が7〜9月期のNSPにどう反映されるか——タイムラグを意識しながら次の改定を待ちたいと思う。

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