A5052 と A1050 の違いをやさしく解説:アルミ合金と純アルミの使い分けまで
「アルミ板の A5052 と A1050、どちらを使えばいいの?」——板金加工や設計現場でよく出る質問です。A5052 は「アルミ合金」、A1050 は「純アルミ」で、強度・加工性・耐食性が大きく異なります。このページでは2つの材種をわかりやすく比較します。
① アルミ合金の記号の読み方
図1:アルミ合金番号の読み方(A5052=Al-Mg 系合金、A1050=純アルミ)
② 化学成分の違い
| Al(アルミ) | 残部(≥ 95%) |
| Mg(マグネシウム) | 2.20〜2.80 %(主合金元素) |
| Cr(クロム) | 0.15〜0.35 % |
| Si | ≤ 0.25 % |
| Fe | ≤ 0.40 % |
| Al(アルミ) | ≥ 99.50 %(純度規定) |
| Mg | —(ほぼなし) |
| Cu | ≤ 0.05 % |
| Si | ≤ 0.25 % |
| Fe | ≤ 0.40 % |
Mg は Al に固溶すると格子ひずみを生じ、転位の動きを妨げる固溶強化をもたらします。A5052 に含まれる Mg 約 2.5% は固溶強化に有効な量で、純 Al(A1050)の約 2 倍の強度を実現します。また少量の Cr 添加が再結晶粒の粗大化を抑え、耐食性も向上させます。
③ 機械的性質の比較
| 性質 | A5052-O(焼なまし) | A5052-H34(加工硬化) | A1050-O(焼なまし) | A1050-H24(加工硬化) |
|---|---|---|---|---|
| 引張強さ(MPa) | 175〜215 | 235〜275 | 65〜95 | 100〜130 |
| 耐力 0.2%(MPa) | 65 以上 | 180 以上 | 15 以上 | 75 以上 |
| 伸び(%) | 14 以上 | 8 以上 | 23 以上 | 6 以上 |
| 硬さ(HBW) | 47 | 68 | 19 | 30 |
| 比重(g/cm³) | 2.68 | 2.71 | ||
| 熱伝導率(W/m·K) | 138 | 222 | ||
| 電気伝導率(%IACS) | 35 | 61 | ||
図2:A5052 vs A1050 性能レーダーチャート(相対比較)
④ 調質記号(テンパー)の読み方
| 記号 | 意味 | A5052 での引張強さ目安 | A1050 での引張強さ目安 |
|---|---|---|---|
| -O | 焼なまし(最軟質) | 175〜215 MPa | 65〜95 MPa |
| -H12 | 1/4 硬質 | 215〜255 MPa | 85〜115 MPa |
| -H22 | 1/4 硬質(焼なまし後加工硬化) | 215〜255 MPa | — |
| -H32 | 1/4 硬質(安定化処理) | 215〜255 MPa | — |
| -H34 | 1/2 硬質(安定化処理) | 235〜275 MPa | — |
| -H38 | 硬質(安定化処理) | 265〜305 MPa | — |
| -H24 | 1/2 硬質 | — | 100〜130 MPa |
⑤ 耐食性・加工性・導電性の比較
| 特性 | A5052 | A1050 | コメント |
|---|---|---|---|
| 耐食性 | 高い(優) | 非常に高い(最良) | どちらも優秀。塩水環境では A5052 の Cr 添加が有効 |
| 成形加工性 | 良好(-O 材) | 非常に良好(最軟質) | 深絞り・曲げには A1050-O が有利 |
| 溶接性 | 良好 | 良好 | どちらも溶接しやすい。溶接部の強度低下はある |
| 熱伝導率 | 138 W/m·K | 222 W/m·K | 放熱・熱交換には A1050 が大きく有利 |
| 電気伝導率 | 35% IACS | 61% IACS | 導体(バスバー等)には純アルミが適する |
| アルマイト処理 | 良好(均一な皮膜) | 最良(最も均一) | A1050 のアルマイト皮膜は透明度が高い |
| コスト | やや高い | 安い | A1050 は純度が高く Mg 添加コストがない分安価 |
⑥ JIS・海外規格対応表
| JIS(日本) | ASTM/AA(米国) | EN(欧州) | ISO | 系統・特記 |
|---|---|---|---|---|
| A5052 | 5052 | EN AW-5052 / AlMg2.5 | ISO 209 AlMg2.5 | Al-Mg 系・汎用合金板 |
| A1050 | 1050A | EN AW-1050A / Al99.5 | ISO 209 Al99.5 | 工業用純アルミ(≥99.5%) |
| A1100 | 1100 | EN AW-1100 | ISO 209 Al99.0Cu | 純 Al(≥99.0%・Cu微量添加)・類似品 |
⑦ 用途別の使い分け
強度が必要な板金筐体・カバー・ブラケットには A5052-H34 が標準。曲げ・プレス・溶接に対応し、軽量構造体に最適です。
電気抵抗を下げたい導体用途には A1050。電気伝導率が 61% IACS と高く、バスバー・電線・コンデンサ電極に使われます。
塩水耐食性が優れる A5052 が定番。Mg と Cr の複合効果で孔食・粒界腐食を抑えます。
熱伝導率が重要な用途には A1050。222 W/m·K の高熱伝導率で、LED 放熱板・冷却フィンに適します。
アルマイト処理後の外観が重要な場合は A1050。透明度の高い均一な皮膜が得られます。銘板・表示板に最適。
軽量化と強度を両立したい車体部品・内装パネルには A5052-H32/H34 が標準的な選択肢です。
まとめ:A5052 と A1050 で押さえておきたいこと
- A5052 は Al-Mg 合金(Mg ≈ 2.5%)、A1050 は工業用純アルミ(Al ≥ 99.5%)で別物
- 強度:A5052(175〜275 MPa)は A1050(65〜130 MPa)の約 2〜2.5 倍
- 電気・熱伝導率:A1050 が圧倒的に高い(電気 61% IACS vs 35%、熱 222 vs 138 W/m·K)
- 成形加工性:A1050-O が最も柔らかく加工しやすい。深絞り・プレス成形に有利
- アルマイト仕上がり:A1050 の皮膜は透明度が高く装飾用途に優れる
- 板金・構造部品なら A5052-H34、導体・放熱・装飾なら A1050 が基本的な選び方
- どちらも溶接性・耐食性は良好で屋外・海洋環境でも使用可能
- JIS 対応:A5052 = ASTM 5052 / EN AW-5052、A1050 = ASTM 1050A / EN AW-1050A
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