金属の硬さ一覧をやさしく解説:試験法・換算・材料別まとめ
「60HRC のハイス鋼」「200HV のステンレス」——金属の硬さを表す単位はいくつかあり、どれを見ればよいのか迷うことがあります。このページでは、硬さ試験の種類と読み方・主要な硬さ換算表・材料ごとの代表的な硬さ値を一覧でわかりやすく解説します。
① 硬さ試験の種類と読み方
代表的な4つの硬さ試験法
金属の硬さを測る方法は複数あり、それぞれ適した材料・用途が異なります。
正四角錐ダイヤモンド圧子を一定荷重で押し込み、くぼみの対角線長さから算出。最も汎用的で薄板・表面処理層の測定に向く。荷重によりHV・HV0.1等と表記。
圧子の押し込み深さで硬さを判定。スケールによりHRC(ダイヤ圧子・工具鋼向け)、HRB(鋼球・軟鋼向け)等がある。現場での迅速測定に最適。
超硬球を一定荷重で押し込み、くぼみ面積から算出。鋳鉄・鋳造品・鍛造素材の粗い表面でも安定して測定できる。旧記号 HB。
ダイヤモンド先端のハンマーを落下させ、跳ね返り高さで判定。大型部品・圧延ロールなど現場での非破壊測定に適する。
HV と同原理で荷重を 1 gf〜数百 gf に下げたもの。めっき層・窒化層・DED積層部など薄い硬化層の断面硬さ測定に使用。
細長いひし形圧子を使用。非常に薄い層やセラミックス、炭化物単体粒子の測定に用いる。マイクロビッカースより浅いくぼみで測定できる。
図1:代表的な硬さ試験法の圧子形状・測定原理・くぼみ断面の比較
② 硬さ換算表(HV・HRC・HBW・HS 対応)
よく使う硬さ換算の早見表
| 硬さレベル | HV(ビッカース) | HRC(ロックウェルC) | HBW(ブリネル) | HS(ショア) | 引張強さ目安(MPa) |
|---|---|---|---|---|---|
| 非常に軟らかい | 80〜100 | —(測定不可) | 76〜95 | — | ≈ 260〜320 |
| 軟鋼・焼なまし材 | 120〜160 | — | 114〜152 | ≈ 16〜22 | ≈ 390〜520 |
| 調質鋼(中程度) | 200〜250 | ≈ 14〜22 | 190〜238 | ≈ 27〜33 | ≈ 650〜820 |
| 調質鋼(高強度) | 300〜350 | ≈ 29〜36 | 285〜332 | ≈ 38〜45 | ≈ 960〜1130 |
| 焼入れ鋼(中硬さ) | 400〜450 | ≈ 40〜46 | 379〜426 | ≈ 50〜57 | ≈ 1270〜1430 |
| 焼入れ鋼(高硬さ) | 500〜600 | ≈ 49〜56 | 471〜560 | ≈ 62〜72 | ≈ 1580〜1900 |
| 工具鋼・ダイス鋼 | 630〜700 | ≈ 58〜62 | —(測定困難) | ≈ 74〜80 | — |
| ハイス・焼入れ工具鋼 | 750〜870 | ≈ 63〜67 | — | ≈ 82〜88 | — |
| 表面硬化層・炭化物 | 900〜3000 | 参考値のみ | — | — | — |
引張強さ(MPa)≈ HV × 3.3(200〜400HV の範囲で概算)
※ 鋼種・熱処理状態によって誤差が大きくなります。正確な値は引張試験で確認してください。
図2:硬さ換算グラフ(HV と HRC の対応、鋼材基準)
③ 金属・材料別の代表的な硬さ一覧
鉄鋼材料の硬さ
| 材料・状態 | JIS記号例 | HV 目安 | HRC 目安 | HBW 目安 |
|---|---|---|---|---|
| 軟鋼(焼なまし) | SS400 / S10C | 110〜160 | — | 105〜152 |
| 一般構造用圧延鋼 | SS400 | 120〜160 | — | 114〜152 |
| 機械構造用炭素鋼(焼なまし) | S45C | 160〜200 | — | 152〜190 |
| クロムモリブデン鋼(調質・30HRC) | SCM435 | 285〜330 | 28〜34 | 271〜314 |
| ニッケルクロムモリブデン鋼(調質) | SNCM439 | 293〜352 | 30〜36 | 280〜335 |
| 高張力鋼(HT780) | HT780 | ≈ 250〜290 | ≈ 23〜29 | 238〜276 |
| ばね鋼(調質) | SUP9 / SUP12 | 380〜440 | 38〜45 | 360〜420 |
| 軸受鋼(焼入れ焼戻し後) | SUJ2 | 700〜800 | 61〜65 | — |
| 炭素工具鋼(焼入れ後) | SK85(旧SK5) | 650〜760 | 58〜63 | — |
| ダイス鋼(焼入れ焼戻し後) | SKD11 | 640〜720 | 58〜62 | — |
| 熱間ダイス鋼 | SKD61 | 430〜520 | 44〜51 | — |
| ハイス鋼(焼入れ・3回焼戻し後) | SKH51(M2相当) | 780〜870 | 63〜66 | — |
| ハイス鋼(Co添加) | SKH55(M35相当) | 820〜900 | 65〜67 | — |
| 粉末ハイス | HAP40 等 | 900〜1000 | 67〜70 | — |
ステンレス鋼の硬さ
| 材料・状態 | JIS記号 | HV 目安 | HBW 目安 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| オーステナイト系(固溶化処理) | SUS304 | 170〜200 | 160〜190 | 加工硬化で上昇 |
| オーステナイト系(固溶化処理) | SUS316 | 170〜200 | 160〜190 | Mo添加・耐食性向上 |
| フェライト系(焼なまし) | SUS430 | 170〜200 | 162〜190 | 磁性あり |
| 二相系(焼なまし) | SUS329J3L | 270〜310 | 257〜295 | 高強度・耐食 |
| マルテンサイト系(焼入れ焼戻し) | SUS420J2 | 400〜550 | 380〜520 | 刃物・ポンプ部品 |
| 析出硬化系(時効処理後) | SUS630(17-4PH) | 350〜450 | 333〜428 | 高強度ステンレス |
非鉄金属・合金の硬さ
| 材料・状態 | JIS記号例 | HV 目安 | HBW 目安 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 純アルミ(軟質) | A1050-O | 20〜30 | 19〜28 | 最軟質のアルミ |
| アルミ合金(時効硬化) | A2017-T4(ジュラルミン) | 100〜120 | 95〜114 | 航空機用 |
| アルミ合金(時効硬化) | A7075-T6(超ジュラルミン) | 170〜190 | 162〜180 | 高強度アルミ |
| 純銅(焼なまし) | C1100-O | 50〜70 | 48〜66 | 電気配線 |
| 黄銅(1/2硬) | C2700-1/2H | 110〜150 | 105〜143 | 水道部品・精密加工 |
| アルミ青銅(鋳造) | C6161 / CAC702 | 140〜200 | 133〜190 | 金型・スライド・軸受 |
| ベリリウム銅(時効硬化後) | C1720-TH | 340〜400 | 323〜380 | 高強度銅合金・バネ |
| 純チタン(焼なまし) | TP340(Grade 1) | 120〜160 | 114〜152 | 医療・化学 |
| チタン合金 | Ti-6Al-4V(ELI) | 310〜380 | 295〜362 | 航空宇宙・インプラント |
| 純マグネシウム合金 | AZ31B | 50〜80 | 48〜76 | 軽量部品 |
| ニッケル基超合金 | Inconel 625 | 230〜290 | 218〜276 | ジェットエンジン |
| 鉛(純) | — | 3〜5 | 3〜5 | 非常に軟らかい |
表面処理・硬質層・特殊材料の硬さ
| 材料・処理 | 硬さ(HV) | 備考 |
|---|---|---|
| 浸炭焼入れ層(表面) | 700〜800 | SCM415 等、C 0.8〜1.0% 表面層 |
| 窒化処理層(鋼) | 850〜1100 | SACM645 ガス窒化後表面 |
| DLC(ダイヤモンドライクカーボン) | 1500〜3500 | 成膜条件によって大きく変動 |
| TiN コーティング | 2000〜2500 | PVDコーティング・工具刃先 |
| TiAlN コーティング | 2800〜3500 | 高速切削・耐熱性向上 |
| 溶融亜鉛めっき層(η 相) | 50〜70 | 最外層・軟質 |
| 超硬合金(WC-Co) | 1300〜1800 | 切削工具・金型インサート(HRA 85〜94) |
| 炭化タングステン(WC)単体 | ≈ 2400 | 超硬合金の主成分 |
| 炭化バナジウム(VC) | ≈ 2800 | 粉末ハイス中の MC 型炭化物 |
| 立方晶窒化ホウ素(cBN) | ≈ 4000〜5000 | 焼入れ鋼の旋削工具 |
| ダイヤモンド(天然・人工) | 8000〜10000 | 自然界最硬物質・圧子材料 |
図3:材料別の代表的な硬さ(HV)比較グラフ
④ 硬さと強さ・靭性のトレードオフ
硬くするほど脆くなる関係
鋼材では一般に、硬さ(耐摩耗性)と靭性(粘り強さ)はトレードオフの関係にあります。高硬度材料は衝撃や曲げに弱く、金型・工具では適切な硬さを選ぶことが重要です。
63〜68HRC(780〜870HV)が標準。ハイス・超硬合金・PVDコーティングを組み合わせて耐摩耗性を最大化します。
SKD11 で 58〜62HRC(630〜720HV)が一般的。硬すぎると欠けが発生するため、焼戻し温度で硬さを調整します。
SCM440 調質で 28〜36HRC(280〜340HV)程度。高強度と靭性を両立した調質(焼入れ+高温焼戻し)状態で使用します。
SUJ2 で 61〜65HRC(700〜800HV)。転がり疲れ寿命は硬さ・残留応力・清浄度の三要素に依存します。
浸炭・窒化・高周波焼入れで表面のみ 700〜1100HV に硬化。内部の靭性を保ちながら耐摩耗性を付加できます。
アルミ青銅(CAC702等)で 140〜200HV。鉄よりは低いですが、プレス金型のスライド・コア材として自己潤滑性・耐焼付性で優れます。
⑤ 硬さ試験の選び方:JIS・ISO 規格対応表
| 試験法 | JIS 規格 | ISO 規格 | ASTM 規格 | 適した材料・硬さ範囲 |
|---|---|---|---|---|
| ビッカース(HV) | JIS Z 2244 | ISO 6507-1〜4 | ASTM E92 | 全硬さ域・薄板・表面層・多用途 |
| ロックウェル(HRC/HRB等) | JIS Z 2245 | ISO 6508-1〜3 | ASTM E18 | HRC:焼入れ鋼 / HRB:軟鋼・非鉄 |
| ブリネル(HBW) | JIS Z 2243 | ISO 6506-1〜4 | ASTM E10 | 鋳鉄・鍛造素材・20〜650HV |
| ショア(HS) | JIS Z 2246 | ISO 1648 | ASTM D2240 | 大型部品・圧延ロール・非破壊 |
| ヌープ(HK) | — | ISO 4545 | ASTM E384 | 薄膜・セラミックス・炭化物 |
| 硬さ換算 | JIS Z 2271 | ISO 18265 | ASTM E140 | HV/HRC/HBW/HS 相互換算 |
⑥ HV・HRC・HBW を混同すると何が起きるか:単位表記の重要性
「数値だけ」では意味が伝わらない
硬さの数値は、単位記号(HV・HRC・HBW)を省略すると全く別の意味になってしまいます。たとえば「硬さ 60」という表記だけでは、60HRC(焼入れ工具鋼レベル)なのか、60HBW(非常に軟らかい金属)なのかが判別できません。現場での誤認識は、製品不具合・工具破損・検収トラブルに直結します。
- 「60HRC」を「60HV」と読み違え、非常に軟らかい材料と判断してしまう
- 「200HBW」を「200HV」と混用し、換算なしに引張強さを計算して大きな誤差を生む
- 図面の硬さ指示を単位なしで転記し、発注先・下請けで別スケールで測定・評価される
- 硬さ試験報告書の単位を確認せず、異なるスケールの数値を同じ軸で比較してしまう
同じ硬さを異なるスケールで表したときの数値の違い
下表は、ほぼ同等の硬さを各スケールで表示したときの数値の差を示します。スケールによって数値が大きく異なるため、単位なしの数値の比較は危険です。
| 硬さレベルの目安 | HV | HRC | HBW | 単位を省略した場合の誤認リスク |
|---|---|---|---|---|
| 調質鋼(中程度) | 300 | 30 | 285 | 「30」だけでは 30HRC(中硬さ)か 30HBW(非常に軟)か不明 |
| 焼入れ鋼(高硬さ) | 550 | 53 | 519 | 「53」だけでは 53HRC か 53HBW か判別不能(硬さがまるで違う) |
| 工具鋼・ダイス鋼 | 660 | 59 | — | 「660」と「59」は同じ材料なのに数値が 10 倍以上異なる |
| ハイス鋼 | 830 | 65 | — | 「65」では 65HRC(非常に硬い)と 65HV(超軟質)で真逆の評価になる |
- 必ず単位記号を数値に付ける:660HV、59HRC、285HBW
- ビッカース試験で荷重条件を明示する場合:HV 0.3(0.3 kgf荷重)、10HV(10 kgf荷重)
- 図面・仕様書・報告書への転記時は必ずスケール名を確認してから記載する
- 異なるスケールの値を比較する際は必ず ISO 18265 / JIS Z 2271 の換算表を経由する
⑦ 試験荷重で硬さ値がずれる:荷重依存性に注意
なぜ荷重が違うと値が変わるのか
ビッカース硬さ(HV)は理論上、荷重が異なっても同じ値を示す「荷重非依存性」を持ちます。しかし実際の金属では、荷重が小さいほどくぼみも小さくなり、表面酸化膜・残留応力・不均一な組織などの影響を受けやすくなります。このため、低荷重(マイクロビッカース域)と高荷重(通常ビッカース域)では、同じ材料でも測定値に差が生じることがあります。この現象を 「不均一硬化現象(ISE: Indentation Size Effect)」 と呼びます。
荷重と測定値のずれ:実例
| 材料・状態 | HV 0.1(低荷重) | HV 1(中荷重) | 10HV(高荷重) | ずれの主な原因 |
|---|---|---|---|---|
| SKD11(焼入れ焼戻し) | 680〜720 | 660〜690 | 640〜670 | ISE・測定ばらつき |
| SACM645 窒化層(表面) | 950〜1100 | 850〜950 | 700〜800(下地混入) | 硬化層が薄く下地の影響大 |
| DLC コーティング(2〜5 µm) | 1800〜2500 | 1200〜1800(膜+下地混入) | 測定不適(下地ほぼ支配) | 膜厚に対して荷重過大 |
| アルミ青銅 DED 積層部 | 160〜210 | 150〜200 | 145〜195 | 組織不均一・気孔の影響 |
| SS400(フェライト+パーライト) | 130〜170 | 125〜160 | 120〜155 | フェライト・パーライト個別への打込 |
図4:試験荷重と測定範囲の関係。荷重が大きすぎると下地の影響を受けた値になる
- 薄い硬化層(窒化・DLC・めっき)の測定 → HV 0.025〜HV 0.3(マイクロビッカース)
- 浸炭層・工具鋼の硬さ管理 → HV1〜HV10(通常ビッカース)
- 鋳鉄・鍛造素材の品質確認 → HBW(高荷重・広い測定面積で組織の平均を取る)
- 複数荷重で測定してばらつきを確認することで、ISE の有無・組織不均一を把握できる
⑧ 焼入れ鋼と非鉄金属で硬さを比較するときの注意点
換算式は「鋼材専用」である
JIS Z 2271 / ISO 18265 の硬さ換算表と「HV × 3.3 ≈ 引張強さ(MPa)」の近似式は、炭素鋼・合金鋼を対象に導出されたものです。アルミ合金・銅合金・チタン合金などの非鉄金属にそのまま適用すると、引張強さを大幅に過大評価または過小評価します。
| 材料 | HV 実測値 | HV×3.3 で計算した引張強さ(MPa) | 実際の引張強さ(MPa) | 誤差の傾向 |
|---|---|---|---|---|
| SCM440(調質) | 310 | ≈ 1023 | ≈ 980〜1130 | 概ね良好 |
| A7075-T6(アルミ合金) | 180 | ≈ 594(過大) | ≈ 500〜570 | 過大評価 |
| CAC702(アルミ青銅 鋳造) | 170 | ≈ 561(過大) | ≈ 440〜590 | 組成・状態依存で大きな誤差 |
| Ti-6Al-4V(焼なまし) | 350 | ≈ 1155(過大) | ≈ 895〜970 | 過大評価(比弾性率の違い) |
| Inconel 625 | 260 | ≈ 858(過大) | ≈ 827〜896 | 比較的近いが過大傾向 |
HRC スケールが非鉄に使えない理由
HRC(ロックウェル C スケール)は 20〜70HRC の範囲を有効測定域とし、主に焼入れ鋼を対象に設計されています。アルミ合金(20〜190HV 程度)・銅合金(50〜400HV 程度)・純チタン(120〜160HV 程度)のような低〜中硬さの非鉄金属では、HRC スケールの下限以下に相当するため測定が成立しません。非鉄金属の硬さ管理には HV・HBW・HRB(ロックウェル B スケール) を使います。
HRC(20HRC 以上)・HV・HBW(650HV 以下の範囲)。工具鋼の管理は現場では HRC が主流。
HV・HBW・HRB が基本。アルミ薄板・銅合金薄板は HV(低荷重)またはHRB。鋳造品は HBW が安定。
非鉄への「HV × 3.3」適用は誤差大。各材料ごとの換算係数を確認するか、直接引張試験で取得すること。
DEDで積層した銅合金・Co基合金では、冷却速度・熱サイクルで組織が変わり硬さもロット・部位で異なる。断面マッピングで評価することを推奨。
⑨ 図面の硬さ指定を正しく読む:表記ルールと実務のポイント
JIS B 0031 / JIS B 0600 に基づく図面表記
機械部品の図面では、熱処理・表面処理の仕様とともに硬さ指定が記載されます。JIS B 0031(表面性状の図示方法)や各社の図面標準によって表記形式は異なりますが、基本的なパターンは共通しています。
図面の硬さ指定を読むときのチェックポイント
| 確認項目 | 読み取るべき内容 | 見落としやすいポイント |
|---|---|---|
| スケール名 | HRC・HV・HBW・HRBのどれか | 「HB」はHBW(旧JIS表記)と同義。「HR」だけではスケールが不明 |
| 指定方式 | 範囲指定(○〜○)か、下限のみ(○以上)か | 上限なし指定では硬くなりすぎによる脆化に注意が必要 |
| 測定箇所 | 表面・芯部・断面の位置指定があるか | 表面処理品では「表面」と「芯部」の指定が別々になることが多い |
| 硬化深さ | 有効硬化深さ(Ds)または全硬化深さの指定があるか | 「550HV 以上の深さ」が有効硬化深さの定義(JIS G 0557) |
| 熱処理プロセス | 浸炭・窒化・高周波・調質など工程の明示 | プロセス指定がない場合は達成手段が問われないが、材料選定で制約あり |
| 測定荷重 | HV の場合は荷重が明示されているか(HV0.3 など) | 薄い表面処理層では荷重指定がないと過小・過大な値が出る |
よくある図面表記の誤解と正しい解釈
| 図面の表記 | 誤った解釈 | 正しい解釈 |
|---|---|---|
| 硬さ 60(単位なし) | 60HRC と判断する | スケール不明。図面の一般注記・材料欄を確認し、設計者に問い合わせる |
| 58〜62HRC(SKD11) | 580〜620HV と換算して管理する | 換算値は 638〜746HV 程度(換算表を使う。単純比例換算は不可) |
| 200HB(旧表記) | 200HV と同じと判断する | HB(旧 JIS)= HBW(現行 JIS)。HV とは測定原理が異なり値も異なる(200HBW ≒ 210HV) |
| 表面 900HV 以上(窒化品) | 高荷重(10HV)で測定する | 窒化層は薄いため低荷重(0.1〜0.3HV)で測定。HV10 では下地の影響が大 |
| 28〜34HRC(SCM440 調質) | — | 調質後の硬さ範囲として明確。HV 換算では概ね 272〜321HV |
浸炭焼入れにおける有効硬化深さ(Ds)は「550HV(≒ 52HRC)以上の層の深さ」として定義されています。窒化処理の場合は500HV 以上の深さが基準となることが多く(JIS G 0562 参照)、図面に「DS○○mm 以上」と記載されます。
まとめ:金属の硬さで押さえておきたいこと
- 硬さ試験には HV・HRC・HBW・HS など複数あり、材料や用途によって使い分ける
- HV(ビッカース)は最も汎用的で、薄板・表面処理層・広い硬さ域をカバーする
- HRC は焼入れ工具鋼・金型鋼の管理に広く使われ、58〜68HRC が工具鋼の一般的な範囲
- 単位記号(HV・HRC・HBW)を省略すると全く異なる意味になる:必ずスケール名を付けて表記する
- 試験荷重が小さいほど ISE(押し込みサイズ効果)の影響を受けやすい。薄い硬化層には低荷重を使う
- 「HV × 3.3 ≈ 引張強さ」換算は鋼材専用:アルミ合金・銅合金・チタン合金への適用は過大評価になるため不可
- HRC スケールは非鉄金属の測定域外。非鉄には HV・HBW・HRB を使う
- 図面の硬さ指定では、スケール名・指定方式(範囲 or 下限)・測定箇所・荷重条件を必ず確認する
- 「HB」は旧 JIS 表記で現行の HBW と同義。HV との混用に注意する
- 炭素鋼・合金鋼は 110〜900HV 超と幅広く、熱処理状態で大きく変わる
- 超硬合金は 1300〜1800HV、DLC は 1500〜3500 と工具鋼をはるかに超える硬さを持つ
- 硬さと靭性はトレードオフ:用途に応じた「適切な硬さ」の選定が材料設計の核心

