ステンレスはなぜ錆びる? もらい錆・隙間腐食・孔食をやさしく解説

ステンレスはなぜ錆びる? もらい錆・隙間腐食・孔食をやさしく解説

「錆びない金属」のイメージがあるステンレスですが、条件次第では錆びます。「なぜ錆びないのか」と「どんな条件で錆びるのか」を理解すれば、ステンレスを正しく使えます。この記事でもらい錆・隙間腐食・孔食の3つの腐食形態をやさしく解説します。

ステンレスが錆びにくい理由:不動態皮膜

ステンレス鋼基地(Fe-Cr合金) 不動態皮膜(Cr₂O₃:厚さ約 2〜5 nm) 大気・水分・酸素 * Crが酸素と反応してCr₂O₃(酸化クロム)の薄膜を自己形成。これが腐食物質の侵入を防ぐバリアになります。
ステンレスが錆びにくい理由: Crが大気中の酸素と反応して表面にCr₂O₃(酸化クロム)の不動態皮膜(約2〜5nm)を自己形成します。この皮膜が腐食因子の侵入を防ぎます。傷がついても酸素がある限り自己修復します(自己修復性)。

ステンレスが錆びる3つの主要形態

もらい錆(異種金属接触腐食)

ステンレス表面に鉄粉・鉄くず・普通鋼の切屑が付着すると、その鉄が先に錆びてステンレス表面を汚染します。赤茶色の錆が点在します。

孔食(ピッティング)

塩化物イオン(Cl⁻)が不動態皮膜を局所的に破壊し、深い穴(ピット)が形成される腐食。進行すると貫通孔になります。

隙間腐食

ボルト・ガスケット・重なった板の隙間など、溶液が滞留する狭い空間で酸素が欠乏し、不動態皮膜が維持できなくなる腐食。

腐食形態別:原因・発生条件・対策

腐食形態主な原因発生しやすい環境対策
もらい錆鉄粉・鉄くずの付着切削加工後・鉄製設備との接触鉄粉除去・酸洗い・不動態化処理
孔食塩化物イオン(Cl⁻)海水・塩素系洗剤・温泉水SUS316以上に変更・表面研磨・定期洗浄
隙間腐食隙間での酸素欠乏ボルト締結部・フランジ面・重ね継手隙間をなくす設計・シール材使用・SUS316以上
粒界腐食(鋭敏化)溶接熱でCr炭化物析出溶接熱影響部SUS304L/316L使用・固溶化熱処理
応力腐食割れ引張応力 + 塩化物高温塩化物溶液・残留応力部材二相系・高Ni合金・応力除去処理

ステンレス種類別の耐食性比較

孔食電位(Vc’100)でわかる耐孔食性

耐孔食指数(PI)とは: PI = Cr(%) + 3.3×Mo(%) + 16×N(%)という式で計算される耐孔食性の指標です。数値が大きいほど塩化物環境に強いです。SUS304のPI ≒ 18、SUS316のPI ≒ 25、二相系(SUS329J3L)のPI ≒ 40程度です。

錆を防ぐための実践的なポイント

材料グレードの選定

塩化物環境にはSUS316以上。海水・プールにはSUS329J3L(二相系)かチタンを検討します。

表面仕上げ

表面が滑らかなほど腐食因子が付着しにくい。BA仕上げ・電解研磨はもらい錆・孔食のリスクを下げます。

施工・保管管理

鉄製工具や鉄粉との接触を避ける。保管時は鉄材と分けて保管し、切削後は鉄粉を除去します。

定期洗浄

塩素系洗剤を使った後は水洗いを徹底。隙間部に残った洗剤が隙間腐食の原因になります。

まとめ:ステンレスの腐食で押さえておきたいこと

  • ステンレスはCr₂O₃の不動態皮膜で腐食を防ぎますが、皮膜が破壊される条件では錆びます。
  • 主な腐食形態はもらい錆・孔食(塩化物)・隙間腐食・粒界腐食・応力腐食割れの5種です。
  • 塩化物環境(海水・塩素系洗剤)ではSUS304では孔食が起きやすく、SUS316以上を選びます。
  • 溶接後の腐食対策にはSUS304L / SUS316L(低炭素グレード)を使います。

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