S10CとS45Cの違いをやさしく解説:低炭素鋼と中炭素鋼の入口
機械構造用炭素鋼(S□□C)の中で、S10CとS45Cは炭素量の両極端に位置します。「S45Cはよく知っているけどS10Cは?」という疑問に答えながら、低炭素鋼と中炭素鋼の使い分けをやさしく解説します。
S10CとS45Cの規格記号の読み方
どちらもJIS G 4051「機械構造用炭素鋼鋼材」で規定されます。記号の数字は炭素量×100を表します。S10C=0.10%C前後、S45C=0.45%C前後です。
S10CとS45Cの化学成分比較
| 鋼材 | C (%) | Si (%) | Mn (%) | P (%) | S (%) |
|---|---|---|---|---|---|
| S10C | 0.08〜0.13 | 0.15〜0.35 | 0.30〜0.60 | ≦0.030 | ≦0.035 |
| S20C | 0.18〜0.23 | 0.15〜0.35 | 0.30〜0.60 | ≦0.030 | ≦0.035 |
| S45C | 0.42〜0.48 | 0.15〜0.35 | 0.60〜0.90 | ≦0.030 | ≦0.035 |
| S55C | 0.52〜0.58 | 0.15〜0.35 | 0.60〜0.90 | ≦0.030 | ≦0.035 |
機械的性質と熱処理特性の比較
核心の違い: S10Cは炭素量が少ないため焼入れ効果がほぼ得られません。代わりに浸炭焼入れ(表面に炭素を浸透させてから焼入れ)を行うことで、表面だけ高硬度・内部は靱性豊かな構造が実現します。S45Cは焼入れ・焼戻しで全体を高強度化できます。
| 項目 | S10C(低炭素鋼) | S45C(中炭素鋼) |
|---|---|---|
| 引張強さ(焼なまし) | ≧310 N/mm² | ≧690 N/mm² |
| 延性(伸び) | ≧35%(非常に高い) | ≧17% |
| 焼入れ(全体硬化) | 困難(C量不足) | 可能(HRC 50〜58) |
| 浸炭焼入れ | 最適(低C→浸炭後に高硬度皮膜) | 不向き(元のC量が多い) |
| 溶接性 | 非常に良好 | 中(予熱が望ましい) |
| 冷間加工性 | 非常に良好 | 中程度 |
炭素量と特性の変化:S10C〜S55C
S□□C 系 機械構造用炭素鋼一覧
| 鋼材 | C (%) | 熱処理の主用途 | 代表的な使われ方 |
|---|---|---|---|
| S10C | 0.08〜0.13 | 浸炭焼入れ | 歯車・ピン・カム(軽荷重) |
| S15C | 0.13〜0.18 | 浸炭焼入れ | ボルト・ナット・軽荷重ギア |
| S20C | 0.18〜0.23 | 浸炭焼入れ | カムシャフト・ドライブシャフト |
| S35C | 0.32〜0.38 | 焼入れ・焼戻し | フランジ・カップリング |
| S45C | 0.42〜0.48 | 焼入れ・焼戻し/高周波焼入れ | 軸・歯車・金型ホルダー |
| S55C | 0.52〜0.58 | 焼入れ・焼戻し | プレス金型台・ばね |
用途別カード
浸炭部品(S10C・S20C)
歯車・ピニオン・スプロケットなど「表面硬く内部粘り強く」が必要な部品に浸炭鋼を使います。
冷間鍛造品(S10C)
低炭素のS10Cは冷間加工性が高く、冷間鍛造・冷間圧造でボルト・ナットを製造する素材になります。
軸・シャフト(S45C)
焼入れ・焼戻しまたは高周波焼入れで高強度化できるS45Cが汎用機械軸の定番です。
金型台・プレートホルダー(S45C〜S55C)
プレス金型のダイセット・金型ホルダーにはS45C〜S55Cが使われます。
まとめ:S10CとS45Cの違いで押さえておきたいこと
- S10CはC 0.08〜0.13%の低炭素鋼で、焼入れはできないが浸炭焼入れで表面だけを硬化できます。
- S45CはC 0.42〜0.48%の中炭素鋼で、焼入れ・焼戻しで全体を高強度化できます。
- 「表面硬く内部粘り強く」が必要→S10C〜S20C(浸炭)、「全体を強く」→S35C〜S55C(焼入れ)が選択の基本です。
- 溶接が多い場合はC量の低いS10C〜S20Cが溶接性に優れます。
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