「とりあえずFC200」という選定は、コストと流通量の観点では合理的に見えるが、使用条件によっては強度不足で割れを起こすリスクを抱えている。ねずみ鋳鉄(FC)のグレードは引張強さで分類されており、FC200・FC250・FC300の選定境界を数値で理解しておくことが実務上の基本となる。この記事ではグレード別の特性と、壁厚・肉厚との関係、選定ミスが起きやすい典型パターンを整理する。
ねずみ鋳鉄(FC)の特徴:黒鉛の形状が性質を決める
ねずみ鋳鉄はC(炭素)が「フレーク状(薄片状)」の黒鉛として析出した鋳鉄だ。この黒鉛フレークが振動エネルギーを吸収するため振動減衰性に優れ、被削性も良好。一方で、フレーク黒鉛は応力集中源となるため引張強さ・延性・靭性が低い。衝撃荷重には弱い。
FC各グレードの引張強さと用途
| グレード | 引張強さ(MPa以上) | 硬さ目安 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| FC150 | 150 | 163〜229HBW | カバー類・非構造部品・装飾品 |
| FC200 | 200 | 163〜229HBW | 工作機械ベッド・ポンプハウジング・汎用 |
| FC250 | 250 | 180〜255HBW | シリンダーブロック・クランクケース・中負荷機械 |
| FC300 | 300 | 196〜269HBW | 工作機械主軸台・ブレーキドラム・高負荷機械 |
| FC350 | 350 | 212〜269HBW | 特殊高強度部品(流通少ない) |
FC200が「汎用グレード」とされる理由
FC200は国内での流通量が最も多く、コストと鋳造性のバランスが良い。工作機械のベッド・フレーム・カバー類から一般機械部品まで幅広く使われる。ただし「汎用」という言葉が独り歩きし、負荷条件を検討せずにFC200を指定するケースも多い。引張強さ200MPa・曲げ強さ約370MPa・圧縮強さ約700MPaが設計上限となる。
FC250・FC300が必要な条件
FC250以上が必要なケースは以下の条件が目安となる。
FC300はブレーキドラムのような摩耗・熱・制動力が同時にかかる部品に使われる。摩耗に対してはFC300の硬さ(196〜269HBW)がFC200(163〜229HBW)より有利で、繰り返し荷重への疲労限度も高い。
壁厚と強度の関係:薄肉だと白鋳鉄化する
ねずみ鋳鉄の鋳造では、肉厚が薄いほど冷却速度が速くなり、炭素がフレーク黒鉛として析出せずにセメンタイト(Fe₃C)として残留する「白鋳鉄化」が起きやすくなる。白鋳鉄は非常に硬く(600HBW以上)脆いため、機械加工が困難で、衝撃で割れやすい。
| 肉厚(mm) | 白鋳鉄化リスク | 対応策 |
|---|---|---|
| 〜5mm | 高い | FCDへの変更を検討・黒鉛化焼鈍 |
| 5〜10mm | 中程度 | 成分調整(Si増量)・低温鋳造 |
| 10mm以上 | 低い | 通常の管理で問題なし |
薄肉部品(壁厚5mm以下)でFCの強度グレードを上げても、白鋳鉄化リスクが高まるだけで強度向上効果が得られない。薄肉・複雑形状ではFCD(ダクタイル鋳鉄)やアルミ合金への材質変更が有効な解決策となる。
FC200が足りる場面 vs FC250以上が必要な場面
| FC200で十分な場面 | FC250以上が必要な場面 |
|---|---|
| 静的・均一荷重のカバー・筐体 | 内圧・油圧がかかる(2MPa超のポンプ等) |
| 振動減衰性を重視する工作機械ベッド | 繰り返し荷重・疲労が問題になる部位 |
| 引張応力が100MPa未満の部品 | 引張応力が130MPaを超える計算結果が出た部品 |
| 肉厚20mm以上で複雑形状の鋳造品 | 肉厚が均一で成分管理しやすい単純形状 |
| コスト優先でよい非重要部品 | 安全率2.0以上を確保する必要がある重要保安部品 |
トラブル事例
まとめ
- FCの数字は引張強さの下限値(MPa)——FC200は200MPa以上、FC250は250MPa以上
- FC200は汎用グレードだが「とりあえずFC200」は内圧・衝撃荷重がかかる部位では危険
- 引張応力が130MPaを超える、または内圧2MPa超の部位はFC250を選ぶ
- ブレーキドラム・主軸台など摩耗+荷重の部位にはFC300が適する
- 壁厚5mm以下の薄肉部品でFCのグレードを上げても白鋳鉄化リスクが増すだけで効果は薄い——FCDへの変更を検討する
- 衝撃荷重がある部位はFCよりFCD(ダクタイル鋳鉄)を検討する


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