鋼材の材料記号(JIS)の読み方をやさしく解説:SS・SM・SN・S-C・SCM・SUJの意味と体系

鉄鋼材料

「SS400のSSって何の略?」「S45Cの45は炭素量のこと?」——図面に書かれた材料記号を読み解けると、材料の特性がそこから推測でき、代替材の検討や発注ミスの防止につながります。本記事では、JIS鋼材記号の体系を系統別に整理し、設計・調達・加工の現場で素早く使える早見表として解説します。

1. JIS鋼材記号の基本構造

JIS鋼材の記号は原則として「材質を示すアルファベット+特性値(多くは強度や炭素量)+補足記号」の順で構成されています。ただし系統によって読み方のルールが異なります。

系統記号パターン代表例規格番号
一般構造用圧延鋼材SS+引張強さSS400JIS G 3101
溶接構造用圧延鋼材SM+引張強さ+種別SM490AJIS G 3106
建築構造用圧延鋼材SN+引張強さ+種別SN490BJIS G 3136
機械構造用炭素鋼鋼材S+炭素量×100+CS45CJIS G 4051
クロムモリブデン鋼鋼材SCM+種別番号SCM435JIS G 4105
高炭素クロム軸受鋼鋼材SUJ+種別番号SUJ2JIS G 4805
冷間圧延鋼板SPC+用途記号SPCCJIS G 3141
熱間圧延鋼板SPH+用途記号SPHCJIS G 3131
工具鋼(炭素工具鋼)SK+炭素量×10(旧)/ SK+番号(新)SK105(旧SK3相当)JIS G 4401
合金工具鋼(冷間型)SKD+番号SKD11JIS G 4404
高速度工具鋼SKH+番号SKH51JIS G 4403
ばね鋼SUP+番号SUP9JIS G 4801
快削鋼SUM+番号SUM22JIS G 4804

2. 系統別・記号の読み方詳解

SS(一般構造用)── 数字は引張強さ下限

SS400のSSはSteel Structure(構造用鋼)の略とされます。数字400は引張強さの下限値(MPa)を示します。SS400なら「引張強さ400MPa以上保証」という意味です。溶接性・化学成分の規定がなく、強度さえ満たせば成分は問わない「汎用鋼材」の位置づけです。

記号引張強さ主な用途
SS330330〜430 MPa軽荷重の一般構造物
SS400400〜510 MPa最も汎用的。架台・フレーム・ブラケット全般
SS490490〜610 MPaやや高強度が必要な構造物(SM490の方が一般的)
SS540540 MPa以上高強度構造物(溶接性に注意)

SM(溶接構造用)── 末尾A/B/Cは衝撃試験規定

SM490AのSMはSteel Marine(当初は船舶用)の略で、現在は一般の溶接構造用に広く使われます。末尾のA・B・Cはシャルピー衝撃試験の規定を示します。Aは規定なし、BとCになるほど低温靭性の規定が加わります。橋梁や寒冷地で使う構造物にはB以上を指定します。

S-C(機械構造用炭素鋼)── 数字は炭素量×100

S45Cの「45」は炭素量0.45%(0.42〜0.48%の範囲)を示します。炭素量が多いほど硬さ・強度が増し、溶接性と靭性は低下します。

記号炭素量(C%)焼入れ硬さ目安用途
S10C0.08〜0.13%焼入れ困難浸炭品・ピン・シャフト(表面硬化用)
S25C0.22〜0.28%〜40HRC溶接も可能な機械部品
S45C0.42〜0.48%55〜60HRC最汎用の機械構造用鋼。シャフト・歯車・ボルト
S55C0.52〜0.58%58〜62HRC高硬度が必要な刃物・スプリング・治具

SCM(クロムモリブデン鋼)── 番号は成分種別

SCM435のSCMはSteel Chrome Molybdenum(クロムモリブデン鋼)の略。末尾の数字は成分系列を示す種別番号で、炭素量は直接読み取れません。SCM435の炭素量は0.33〜0.38%、SCM440は0.38〜0.43%です。Crが焼入れ性を高め、Moが焼戻し脆性を抑制するため、S45Cより大断面でも均一に焼入れが入ります。

SUJ(軸受鋼)── 番号は種別

SUJ2のSUJはSteel Use (Japanese) Bearingの略で、高炭素クロム軸受鋼を指します。炭素量は約1.0%と高く、焼入れ後58〜64HRCの高硬度を示します。ベアリング(転がり軸受)の内外輪・転動体として世界標準的に使われる鋼材です。

3. 逆引き早見表──記号を見たらここを確認

図面に書いてある記号系統数字の意味特性のポイント
SS400一般構造用引張強さ下限(MPa)化学成分無規定・溶接性確認必要
SM490A/B/C溶接構造用引張強さ下限(MPa)A/B/Cで低温靭性の規定が変わる
SN490B建築構造用引張強さ下限(MPa)降伏比規定あり(耐震設計対応)
S45C機械構造用炭素鋼炭素量×100(≒0.45%C)数字が大きいほど硬く・溶接困難
SCM435Cr-Mo鋼種別番号(炭素量は別途確認)大断面焼入れ・高強度ボルト・シャフト
SKD11合金工具鋼(冷間型)種別番号焼入れ後58〜62HRC・耐摩耗重視
SUJ2高炭素クロム軸受鋼種別番号焼入れ後58〜64HRC・転がり疲労に最適化
SPCC冷延薄鋼板C=一般用表面滑らか・塗装向き
SPHC熱延薄鋼板C=一般用黒皮あり・安価・厚板

4. よくある読み間違いトラブル

SS400をS45C相当と思い込んで機械加工・熱処理に失敗
状況シャフト材料として「SS400を焼入れしてHRC50以上にしたい」と指示が出たが、焼入れ後に硬度がHRC25程度しか出なかった。
原因SS400は炭素量が0.25%以下程度(規定なし)の低炭素鋼で、焼入れ効果がほとんど出ない。焼入れで高硬度を得るには炭素量0.40%以上(S45C以上)が必要。
対策焼入れ・焼戻しで硬度を出したい部品にはS45C以上を選定する。シャフトや歯車など高硬度・疲労強度が必要な部品にSS400を使うのは誤り。
SM490とSN490の区別がつかず耐震設計NGになった
状況建築構造設計でSN490B指定の柱材にSM490Bを調達した。監理建築士から「設計条件を満たさない」と指摘を受け、材料の取り替えが発生した。
原因SN490BはSM490Bと引張強さ・降伏点の規定値は同等だが、SN材には降伏比80%以下と上降伏点の上限値(355MPa以下)が追加規定されている。耐震設計では「降伏後の変形能力」を確保するためSN材が必須。
対策建築構造設計でSN材が指定されている場合は必ずSN材を調達する。SM材では記号が似ていても降伏比の規定がなく代替不可。

まとめ

  • SS・SM・SN系の数字は引張強さ(MPa)の下限値。SMの末尾A/B/Cは低温靭性規定の有無を示す。
  • S-C系(S45C等)の数字は炭素量×100の近似値。数字が大きいほど硬く焼入れ効果が高い。
  • SCM・SKD・SUJ等の末尾番号は成分種別であり、炭素量を直接表すものではない。
  • SS400は化学成分無規定のため焼入れには不適。焼入れが必要な部品はS45C以上を選ぶ。
  • SM490とSN490は引張強さは同等でも、SN材には降伏比規定があり耐震設計では代替不可。
  • 記号の体系を理解すると、見たことのない記号でも「どの系統か」「どんな特性か」を推測できるようになる。

コメント