SPC系鋼板まとめ:SPCC・SPHC・SECC・SGCC・SGCDの違いと板金設計での選び方

鉄鋼材料

板金設計の材料選定で「SPCC・SPHC・SECC・SGCCのどれを使えばいいか」と迷う場面は多いです。記号が似ていて混同しやすいですが、ベース材の製造方法と表面処理の組み合わせで特性が大きく変わります。本記事では、SPC系鋼板を「ベース材」と「表面処理」の2軸で整理し、耐食性・溶接性・コストの観点から設計現場で使える選定基準を解説します。

1. SPC系鋼板の全体像

SPC系鋼板は主にベース材(冷延・熱延)表面処理(めっきの有無・種類)の組み合わせで分類されます。

記号ベース材表面処理規格耐食性溶接性コスト感
SPCC冷延なし(地鉄)JIS G 3141低(防錆処理必要)基準
SPHC熱延なし(黒皮付き)JIS G 3131低(黒皮あり)○(黒皮除去要)SPCCより安
SECC冷延(SPCC相当)電気亜鉛めっきJIS G 3313中(亜鉛5〜20μm)SPCCの1.3〜1.5倍
SGCC冷延(SPCC相当)溶融亜鉛めっきJIS G 3302高(亜鉛45〜275g/m²)△(亜鉛ヒューム注意)SPCCの1.5〜2倍
SGCD冷延(絞り用)溶融亜鉛めっきJIS G 3302SGCCより高
SGHC熱延(SPHC相当)溶融亜鉛めっきJIS G 3302中程度

2. 記号の読み方

記号分解意味
SP C CS=Steel、P=Plate、C=Cold rolled(冷延)、C=Commercial(一般用)
SP H CH=Hot rolled(熱延)、C=Commercial
S E CCE=Electro-galvanized(電気亜鉛めっき)
S G CCG=hot-dip Galvanized(溶融亜鉛めっき)
SGC DD=Drawing(絞り用)

3. 電気めっき(SECC)と溶融めっき(SGCC)の違い

同じ亜鉛めっきでも製造方法でめっき厚・密着性・外観が大きく異なります。

項目SECC(電気亜鉛めっき)SGCC(溶融亜鉛めっき)
めっき厚片面5〜20μm(薄い)片面約45g/m²以上(厚い・重量換算)
外観光沢あり・均一スパングル模様(結晶花様)またはゼロスパングル
耐食性中程度(塩水噴霧試験72〜120時間)高い(塩水噴霧試験数百〜1000時間以上)
溶接性○(薄いめっきで比較的容易)△(亜鉛ヒュームが多く発生、換気必須)
プレス成形性○ 良好△ 合金層が固くプレス成形で剥離リスク
代表用途電子機器シャーシ・制御盤・家電内部部品建材(屋根・壁)・家電外装・自動車防錆鋼板

4. 用途別の選び方

SPCC を選ぶ場面

屋内使用・塗装仕上げあり・表面品質が重要・薄板(1.6mm未満)。塗装後に防錆性を確保でき、最もコストと加工性のバランスが良い。電子機器の内部シャーシ、精密機械のカバーなど。

SPHC を選ぶ場面

板厚2mm以上・構造部材・塗装しないか後処理あり・コスト優先。農機具フレーム・建設機械補強材・溶接構造物の骨格材など。溶接前に黒皮除去が必要。

SECC を選ぶ場面

屋内・半屋外で耐食性が必要・塗装なしで使いたい・溶接が多い用途。電気制御盤・電子機器シャーシ・屋内設備の筐体。塗装レスでも亜鉛めっきが防錆機能を持つ。

SGCC を選ぶ場面

屋外・高湿度・腐食環境・長期耐食性が必要。建築外装(屋根・外壁)・空調機器外装・自動車アンダーボディ。溶接時は換気が必須。

5. 溶接時のめっき鋼板の注意点

注意:亜鉛ヒュームに注意SECC・SGCCを溶接すると亜鉛蒸気(亜鉛ヒューム)が発生する。亜鉛ヒュームを吸引すると「金属熱」(発熱・悪寒・関節痛)が発生する。必ず局所排気装置・防塵マスク(溶接ヒューム対応品)を使用し、換気を徹底する。

また、亜鉛めっき鋼板をMAG溶接する場合、ブローホール(気泡欠陥)が発生しやすいです。溶接速度を落とし、溶融池から亜鉛蒸気が逃げやすいように入熱条件を調整します。

6. トラブル事例

SECCをSGCCと思い込んで屋外設置したら1年で赤錆が出た
状況「亜鉛めっきなら屋外でも大丈夫」と判断してSECCの外装パネルを屋外に設置した。約1年後に赤錆が進行し、外観不良と強度低下が問題になった。
原因SECCの電気亜鉛めっき厚は5〜20μmと薄く、屋外の塩分・紫外線環境では耐食性が不足する。屋外用途にはSGCC(溶融亜鉛めっき45g/m²以上)またはカラー鋼板(塗装品)が必要。
対策屋外・腐食環境ではSGCCを選定するか、SECCを使う場合は必ずアクリル系・ポリエステル系の耐候性塗装を施す。設計段階で設置環境(屋内/屋外/塩害地域)を確認し、耐食性要求を明確にする。

まとめ

  • SPC系鋼板は「ベース材(冷延SPCC・熱延SPHC)」と「表面処理(なし・電気亜鉛SECC・溶融亜鉛SGCC等)」の組み合わせで分類する。
  • SPCC:塗装前提・精密板金・薄板の基本材。耐食性は低いが加工性とコストが最良。
  • SPHC:構造部材・溶接構造物に安価で使えるが、塗装時は黒皮除去が必須。
  • SECC:屋内・半屋外で塗装レスの耐食性が必要な場合。電子機器筐体に多用。
  • SGCC:屋外・腐食環境・長期耐食性が必要な場合。建材・外装に広く使用。
  • 亜鉛めっき鋼板(SECC・SGCC)の溶接では亜鉛ヒュームが発生するため換気・防塵マスクが必須。

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