「金属3Dプリンターって、種類がたくさんあって何が違うのかよくわからない」と感じる方は多いのではないでしょうか。金属の積層造形(アディティブマニュファクチャリング)には大きく分けて DED方式 と PBF方式 という2つの代表的なプロセスがあります。この記事では、それぞれの仕組み・特徴・使いどころをわかりやすく解説します。
① プロセス名の読み方と意味
まずそれぞれの名前の意味から確認しましょう。
🔵 DED(指向性エネルギー堆積法):材料(粉末またはワイヤ)をノズルから供給しながら、同時にレーザーや電子ビームで溶融・堆積させる方式です。
🔷 PBF(粉末床溶融結合法):粉末をベッド(床)に均一に薄く敷き、レーザーや電子ビームで必要な部分だけを選択的に溶融・結合する方式です。
② 代表的な技術の種類
DED・PBFそれぞれにいくつかのサブカテゴリがあります。
| 分類 | 代表技術名 | 熱源 | 材料形態 |
|---|---|---|---|
| DED | L-DED(レーザーDED) LMD(レーザーメタルデポジション) |
レーザー | 粉末・ワイヤ |
| DED | WAAM(ワイヤーアーク積層造形) | アーク(TIG/MIG) | ワイヤ |
| DED | EB-DED(電子ビームDED) | 電子ビーム | ワイヤ・粉末 |
| PBF | SLM / LPBF(選択的レーザー溶融) | レーザー | 粉末 |
| PBF | EBM(電子ビーム溶融) | 電子ビーム | 粉末 |
| PBF | SLS(選択的レーザー焼結) | レーザー | 粉末(ポリマー含む) |
※ SLM・LPBFは呼称が複数ありますが、レーザーで金属粉末を完全溶融するPBF方式です。メーカーによって名称が異なります。
③ 仕組みの違いをイラストで理解する
📌 DED方式のポイント:材料を「供給しながら溶かす」ので、既存の部品に肉盛りしたり、補修したりすることが得意です。造形空間の制約が少なく、大型部品にも対応できます。
📌 PBF方式のポイント:粉末を「敷いて→溶かす→敷いて→溶かす」を繰り返すため、非常に細かい形状や複雑な内部構造(格子構造・流路など)を精密に作ることができます。
④ DEDとPBFの特性を比較する
| 評価項目 | DED | PBF | 補足 |
|---|---|---|---|
| 寸法精度 | ★★★ | ★★★★★ | PBFは数十µm台の精度が得られる |
| 表面粗さ | ★★ | ★★★★ | PBFは粉末粒度が細かく面粗さが良好 |
| 造形速度 | ★★★★★ | ★★★ | DEDは堆積速度が速く大型造形に有利 |
| 最大造形サイズ | ★★★★★ | ★★★ | DEDは数mスケールも可能 |
| 複雑形状への対応 | ★★★ | ★★★★★ | PBFは内部流路・格子構造が得意 |
| 材料利用効率 | ★★★★ | ★★★★ | PBFの未溶融粉末は一部再利用可能 |
| 既存品への肉盛り・補修 | ★★★★★ | ✕(不可) | DEDの最大の強み |
| 異種材料・傾斜組成 | ★★★★★ | ★★ | DEDはノズル切替で異種材が積層可能 |
⑤ どちらを選ぶ?用途別の使い分け
DED方式が向いているケース
🔧 既存部品の補修・再生
摩耗・損傷した部品に材料を盛り付け、元の形状に復元できます。プレス金型・タービンブレードの補修に活用されています。
🏗️ 大型構造部品の造形
数百mm〜数m規模の大型部品を比較的高速に造形できます。航空・宇宙・造船分野での実績があります。
🔬 傾斜機能材料・マルチマテリアル
複数のノズルから異種材料を切り替えながら堆積することで、組成が連続的に変化する傾斜機能材料を実現できます。
🛠️ 既存品への機能付加
既製品に耐摩耗層・耐熱層・硬化層を局所的に追加することができます。ハイブリッド加工と組み合わせた活用も広がっています。
PBF方式が向いているケース
🎯 高精度・複雑形状部品
内部冷却流路・格子構造・アンダーカット形状など、切削では作れない複雑な内部形状を高精度で造形できます。
🦷 医療・歯科用デバイス
患者ごとにカスタマイズされたインプラント・補綴物をチタン合金などで精密に造形します。医療分野で広く普及しています。
✈️ 航空宇宙の精密部品
複雑な燃料ノズル・熱交換器など、軽量化と高性能を両立する部品の製造に使われています。品質の安定性が高いです。
🏎️ 試作・小ロット生産
金型不要で直接部品を造形できるため、試作品製作や少量生産の部品に適しています。リードタイム短縮に貢献します。
⑥ 関連する規格・標準
| 規格 | 内容 | 対象 |
|---|---|---|
| ISO/ASTM 52900 | 積層造形の用語・概念の国際統一規格 | DED・PBF共通 |
| ISO/ASTM 52921 | 標準用語・座標系の定義 | DED・PBF共通 |
| ASTM F3187 | DED方式の標準ガイドライン | DED専用 |
| ASTM F3301 | PBF-EB(電子ビームPBF)の標準仕様 | PBF専用 |
| JIS B 0660シリーズ | 国内の積層造形関連用語・試験方法 | DED・PBF共通 |
※ 積層造形の規格は現在も整備が進んでいます。航空・医療分野では、より厳格な品質管理・材料認証が求められます。
まとめ:DED・PBFで押さえておきたいこと
まとめ
- DED方式は「材料を供給しながら溶融・堆積」する方式で、大型造形・既存品補修・マルチマテリアルが得意です。
- PBF方式は「粉末を敷いて選択的に溶融」する方式で、高精度・複雑形状・小型精密部品に向いています。
- DEDは造形速度・サイズ・柔軟性、PBFは精度・表面品質・形状自由度でそれぞれ優位があります。
- どちらが優れているというわけではなく、部品の目的・形状・材料・後工程によって最適な方式を選択することが重要です。
- 近年は両方式の利点を組み合わせるハイブリッド加工機(DED+切削加工)も普及が進んでいます。
金属積層造形技術は、航空・宇宙・医療・金型など幅広い産業で活用が広がっています。DEDとPBFの特性の違いを理解することで、どの場面にどの技術を使うべきかの判断力が高まります。この記事が、金属AMを学ぶ方の参考になれば幸いです。

