焼入れ性とは? H鋼(保証焼入れ性鋼)とジョミニー試験をやさしく解説
「S45Cは焼入れできるが、大きな断面では内部まで硬化しない」——これは焼入れ性の問題です。焼入れ性とは「どれくらい深くまで硬化できるか」を示す材料の特性で、設計・材料選定に欠かせない知識です。
焼入れ性(Hardenability)とは
焼入れ性 ≠ 焼入れ硬さ: 焼入れ性(Hardenability)は「焼入れでどれくらい深くまで硬化できるか」の能力です。最高硬さではなく「硬化深さ」の能力を指します。炭素量が多いほど焼入れ後の最高硬さは上がりますが、焼入れ性を上げるのはCr・Mo・Mn・Ni・Vなどの合金元素です。
焼入れ性を決める合金元素の効果
| 合金元素 | 焼入れ性への効果 | 代表鋼種 |
|---|---|---|
| Cr(クロム) | 高い効果。炭化物形成で硬化能を向上 | SCM440, SKD11 |
| Mo(モリブデン) | 非常に高い効果。焼戻し脆性も抑制 | SCM440, SNCM439 |
| Mn(マンガン) | 高い効果。コストも安くH鋼に多用 | SMn材(SMn433等) |
| Ni(ニッケル) | 中程度。靱性向上との相乗効果 | SNCM439 |
| V(バナジウム) | 中程度。細粒化効果もあり | SCM445V等 |
| Si(シリコン) | 小さい(添加量の範囲で) | ばね鋼SUP材 |
ジョミニー試験(一端焼入れ試験)
焼入れ性の定量評価に使われるのがジョミニー試験(JIS G 0561)です。直径25mm・長さ100mmの試験片の一端を水冷し、端から各距離での硬さを測定します。硬さの低下が少ないほど焼入れ性が高いことを示します。
ジョミニー曲線:主要鋼種の焼入れ性比較
H鋼(保証焼入れ性鋼)とは
H鋼(Hardenability Steel)はジョミニー試験の硬さ帯域が保証された鋼種です。通常の炭素鋼・合金鋼は成分の範囲内で硬さがばらつきますが、H鋼は特定の距離での硬さが上限・下限で保証されています。
| JIS記号 | 例 | 保証内容 |
|---|---|---|
| SCM440H | SCM440のH鋼 | ジョミニー硬さ帯域を保証 |
| S45CH | S45CのH鋼 | 焼入れ性の上下限を保証 |
| SNCM439H | SNCM439のH鋼 | 大断面部品の焼入れ設計に使用 |
用途別カード
大断面軸・ボルトの材料選定
直径50mm超の部品にはS45Cでは焼入れ性不足。SCM440Hなど焼入れ性が保証されたH鋼を使います。
ギアボックス・クランクシャフト
SNCM439(H)を使用。大断面でも均一硬化を保証するためH鋼規格を活用します。
金型・工具鋼の焼入れ
SKD11・DC53の高焼入れ性は空冷での大型金型均一焼入れを可能にします。
まとめ:焼入れ性で押さえておきたいこと
- 焼入れ性は「深くまで硬化できる能力」で、最高硬さとは別の概念です。
- 焼入れ性を上げるのはCr・Mo・Mn・Ni・Vなどの合金元素です。
- ジョミニー試験で焼入れ性を定量的に評価し、H鋼は硬さ帯域を保証します。
- 大断面部品の設計ではH鋼(SCM440H・SNCM439H等)を指定することで焼入れ均一性を保証できます。
焼入れ性, ジョミニー試験, H鋼, SCM440H, 焼入れ性 合金元素, Hardenability, 大断面 焼入れ


コメント