C1100(タフピッチ銅)とC1020(無酸素銅)の違いをやさしく解説
「純銅なのにグレードが違う」——C1100とC1020はどちらも純銅ですが、酸素含有量が根本的に異なります。この酸素の量が電気伝導性・溶接性・高温脆性という3つの特性に影響します。
純銅の種類と酸素含有量の違い
核心: 銅の精錬では酸素が混入します。酸素は銅中でCu₂O(酸化第一銅)として存在し、溶接時に水素と反応して水蒸気を生じ、気孔や脆化(水素脆性)を引き起こします。酸素を極限まで下げた「無酸素銅」は溶接・真空機器・高周波用途に必須です。
| 記号 | 名称 | Cu純度 (%) | 酸素含有量 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| C1011 | 無酸素銅(OF) | ≧99.99 | ≦0.0005% | 最高純度・真空機器・半導体 |
| C1020 | 無酸素銅(OFC) | ≧99.96 | ≦0.001% | 溶接可・高周波・音響機器 |
| C1100 | タフピッチ銅(TP) | ≧99.90 | 0.02〜0.05% | 最汎用・電線・導電材 |
| C1201 | りん脱酸銅(PD) | ≧99.70 | ≦0.01%(P添加) | 溶接可・配管・熱交換器 |
C1100 vs C1020 詳細比較
| 項目 | C1100(タフピッチ銅) | C1020(無酸素銅) |
|---|---|---|
| 酸素含有量 | 0.02〜0.05%(Cu₂O含む) | ≦0.001% |
| 電気伝導率 | ≧100%IACS | ≧100%IACS(わずかに高い場合も) |
| 熱伝導率 (W/m·K) | 約391 | 約395 |
| 溶接性 | 不可(水素脆性発生) | 良好(水素脆性なし) |
| 高温強度 | Cu₂Oで脆化するリスク | 脆化しにくい |
| 加工性(冷間) | 優秀 | 優秀 |
| コスト | 安価(汎用) | やや高価(精製コスト) |
電気伝導率・熱伝導率の比較
水素脆性とは:C1100を溶接してはいけない理由
C1100(タフピッチ銅)を還元性雰囲気(水素含む雰囲気)で加熱すると、銅中のCu₂OがH₂と反応して水蒸気(H₂O)が生成します。この水蒸気が粒界で膨張し、微細なき裂を生じさせます。これを水素脆性と呼び、溶接後に強度が大幅に低下します。還元性ガス雰囲気での熱処理・ろう付け・溶接にはC1020またはC1201(りん脱酸銅)を使います。
JIS・海外規格対応表
| JIS | ASTM/UNS | EN | 特徴 |
|---|---|---|---|
| C1100 | C11000 / ETP | CW004A | タフピッチ銅・汎用電導材 |
| C1020 | C10200 / OF | CW008A | 無酸素銅・溶接・真空機器 |
| C1201 | C12000 / DHP | CW024A | りん脱酸銅・配管・熱交換器 |
用途別カード
電線・バスバー(C1100)
電気伝導性が最も重要な電線・銅バスバー・母線にはコストの安いC1100が標準です。
プリント基板端子(C1100)
銅箔・電気端子・コネクタ接点。溶接しない用途ではC1100で十分です。
音響・高周波機器(C1020)
高純度が求められるオーディオケーブル・高周波コイル・真空機器にC1020が使われます。
溶接・ろう付け部品(C1020/C1201)
溶接や水素雰囲気熱処理が必要な部品にはC1020またはりん脱酸銅C1201を使います。
まとめ:C1100とC1020で押さえておきたいこと
- C1100(タフピッチ銅)は酸素0.02〜0.05%含む汎用純銅。電線・バスバーの標準材料です。
- C1020(無酸素銅)は酸素≦0.001%の高純度銅。溶接・高周波・真空機器に使われます。
- C1100を溶接・水素雰囲気で加熱すると水素脆性が発生します。溶接用途にはC1020かC1201を選びます。
- 電気伝導率はほぼ同等(どちらも100%IACS以上)のため、溶接不要なら安価なC1100を選びます。
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