鉄鋼(厚板)価格の動向を調べてみた:2026年3月、約2年ぶりの一斉値上げ局面

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鉄鋼(厚板)価格の動向を調べてみた:2026年3月、約2年ぶりの一斉値上げ局面

2026年3月、日本製鉄・JFEスチール・神戸製鋼所の高炉大手3社がそろって鉄鋼製品の値上げを表明しました。厚板はトン1万円の引き上げで2年ぶり、その背景には鉄スクラップ価格の高騰・円安・労務費上昇が複合的に絡んでいます。調達担当者として気になる今回の値上げ構造を整理してみました。

※ 本記事のデータは2026年3月28日時点の情報に基づきます。価格・為替は日々変動するため、最新情報は各情報源にてご確認ください。本記事は情報提供を目的としており、投資を推奨するものではありません。

現在の価格水準(2026年3月)

厚板国内市中相場(目安)
約10〜12万
円/トン(店売りベース)
鉄スクラップH2(関東電炉買値)
約5万
円/トン(2026年3月末)
参考為替レート(TTS)
約158〜161
円/USD(2026年3月)

今回の値上げ:何がどう変わるのか

値上げの基本構図:
原料コスト上昇(鉄スクラップ高・原料炭高)+ 円安による輸入コスト増 + 労務費・物流費上昇
   ↓
メーカー側の「自助努力では吸収限界」と判断 → 販売価格への転嫁

具体的な値上げ幅(厚板): トン当たり1万円(品目によって5〜10%)
※ 適用開始:4月契約分(主に6月出荷相当分)から
メーカー 値上げ品種 値上げ幅 適用時期 前回値上げ
日本製鉄 厚板(店売り・建材プロジェクト・橋梁向け) トン1万円(5〜10%) 4月契約分〜(6月出荷) 2024年2月契約分以来 約2年ぶり
JFEスチール 厚板(店売り・ひも付き全分野) トン1万円(5〜10%)+100mm超エキストラ改定 4月契約分〜(6月出荷) 2024年4月出荷分以来 約2年ぶり
神戸製鋼所 薄板(熱延・冷延・表面処理) トン1万円以上 5月出荷分〜 2024年以来

JFEスチールは3月上旬に薄板の値上げを先行発表し、3月23日に厚板へ拡大。日本製鉄も3月26〜27日に厚板値上げを表明しており、薄板→厚板と順次波及する形で、高炉大手が足並みをそろえた格好です。

鉄スクラップ(H2)価格の推移

鉄スクラップH2 関東電炉買値(円/トン)
時期 H2電炉買値(円/トン) 主な出来事
2024年3月約46,000〜48,000前年度末の需要期・高水準
2024年6月約40,000〜43,000需要低迷・価格軟化
2024年9月約39,500価格下落継続
2024年12月約40,000〜43,0003地区平均4万300円(横ばい)
2025年2月約41,750円安進行で輸出価格上昇、13カ月ぶり高値
2026年2月約43,000〜45,000東鉄が全拠点で1,000円引き上げ・需給タイト継続
2026年3月末約50,000(高値)関東H2ベース高値5万円に上昇・東鉄値上げ

値上げの背景:5つの変動要因

① 鉄スクラップの高騰

関東のH2(電炉買値)が3月末に5万円の高値を記録。円安による輸出単価上昇が国内相場を押し上げており、電炉鋼材の主原料コストが構造的に上昇している。

② 円安の定着

2026年3月の為替レートは1ドル158〜161円台。高炉向け原料炭・鉄鉱石はドル建てのため、円安が輸入コストをそのまま押し上げる。メーカー側は「トン1万数千円のコストアップ」と説明している。

③ 労務費・物流費の構造的上昇

春闘で高炉3社が賃上げを回答(日鉄1万円、JFE・神鋼も同水準)。ドライバー不足による物流費の高止まりも継続しており、製造コスト全体が押し上げられている。

④ 厚板市況の反転

2024年以降続いていた厚板市中相場のじり安が、2026年に入り反転。メーカー側は「市場環境が整った」として値上げのタイミングと判断。サプライチェーン全体での採算回復が目的。

⑤ アジア市況と海上運賃

アジアのホットコイル市況は海上運賃の上昇で約20ドル底上げされている。輸入材も同様に割安感が薄れており、内外価格差の縮小が国内メーカーの値上げを後押しする構図となっている。

⑥ 資機材・エネルギーコスト

圧延・精整工程で使う資機材価格の高騰も継続。特に厚板の100mm超品は製造負荷(徐冷・ガス切断・プレス矯正)が高く、JFEはエキストラ料金の改定も同時実施する。

今後の価格見通し(シナリオ別)

シナリオ 鉄スクラップ(H2)想定レンジ 厚板価格への影響 主な前提条件
強気シナリオ 50,000〜55,000円/トン さらなる値上げ申し入れの可能性 円安継続(165円超)・輸出需要旺盛・追加値上げ表明あり
基本シナリオ 44,000〜50,000円/トン 今回値上げは概ね浸透・横ばい基調 為替150〜160円台・需要家の抵抗感は一定程度あり
弱気シナリオ 38,000〜44,000円/トン 値上げ幅の圧縮・流通在庫積み増しで上値重い 円高反転(140円台)・中国鉄鋼輸出増大・国内需要停滞

日本製鉄は「今後の継続的な値上げも状況次第で考える」とコメントしており、今回が一時的な値上げではなく、段階的な価格水準の引き上げを意図している点が興味深かった。需要家・流通業者にとっては、今後もコスト転嫁圧力が続く局面として捉えておく必要があります。

調達担当者のためのリスク管理の考え方

※ 以下はリスク管理の考え方の整理であり、投資・財務アドバイスではありません。具体的な判断は専門家にご相談ください。
手法 概要・メリット 鉄鋼厚板固有の注意点
長期契約・ひも付き交渉 造船・建機など大口ユーザーは「ひも付き」価格交渉で安定調達が可能。 今回の値上げはひも付きも対象。交渉時期・価格改定条項の確認が必須。
在庫の前倒し積み増し 値上げ前の仕入れで単価を抑制できる。 厚板は重量・保管スペースの制約が大きい。保管コストとのトレードオフに注意。
複数メーカーからの分散調達 一社依存を避け、交渉力を確保。 今回は日鉄・JFE・神鋼が横並びで値上げ。交渉余地は限定的だが、納期・品質での差別化余地は残る。
設計段階での板厚見直し 100mm超品は今回エキストラも改定。設計段階での板厚低減が特に有効。 構造計算上の安全率・規格適合性の確認が必要。
スクラップ動向のモニタリング H2電炉買値は電炉鋼材価格の先行指標。東鉄の購入価格改定発表を追うことで値上げの兆候を早期把握できる。 高炉メーカーはスクラップ依存度が低いため、高炉品については原料炭・鉄鉱石動向も同時確認が必要。

調べてみてわかったこと

「約2年ぶりの一斉値上げ」と聞いて単なる価格上昇局面かと思っていたが、調べると構造がより複雑だと分かった。鉄スクラップH2が関東で5万円という高値を記録している背景には、円安による輸出価格の上昇が国内相場を引き上げるという連動構造があり、電炉鋼材だけでなく高炉品にも波及している点が興味深かった。JFEが今回、100mm超の板厚エキストラを同時改定したことは、厚板の製造コスト構造(徐冷・ガス切断・プレス矯正の負荷)を正直に価格に反映させようとする動きで、今後も「品種別の価格精緻化」が進む可能性を示唆している。調達側としては、スクラップH2の動向・東鉄の購入価格改定を先行指標として追いながら、100mm超の設計仕様見直しという実務的な対策も組み合わせるのが現実的な対応になりそうだ。

主な参照:日刊鉄鋼新聞(Japan Metal Daily)、日刊産業新聞、日本経済新聞、日本鉄リサイクル工業会

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