アルミニウム価格の動向を調べてみた:2026年3月、4年ぶり高値圏の背景に中東リスクあり

アルミニウム価格の動向を調べてみた:2026年3月、4年ぶり高値圏の背景に中東リスクあり

※ 本記事のデータは2026年3月23日時点の情報に基づきます。価格・為替は日々変動するため、最新情報は各情報源にてご確認ください。

前回の銅価格に続き、今回はアルミニウムの価格動向を調べました。アルミニウムはこれまでの記事でも何度も登場してきた材料ですが、「今いくらなのか」「なぜ動いているのか」は意識してきませんでした。調べてみると、2026年3月のアルミ相場は約4年ぶりの高値圏にあり、銅とはまた異なる理由——特に中東情勢と中国の生産上限政策——が大きく影響していることがわかりました。

まず現在の価格から:LME・国内NSP・円換算の関係

アルミニウムの国際指標価格も銅と同様にLME(ロンドン金属取引所)のドル建て価格です。ただし日本国内の「建値」の仕組みが銅とやや異なり、「NSP(New Standard Price)」と呼ばれる独自のルールが使われています。

LME アルミニウム(3カ月先物)
約3,420〜3,470 USD
/トン 2026年3月現在
国内NSP(標準地金価格)
500 円
/kg 2026年1〜3月期
参考為替レート
155〜159 円
/USD 2026年3月現在
NSPとは「New Standard Price」の略で、日本独自のアルミ製品価格反映ルールです。
算出方法:直前3カ月の月間平均地金価格の平均値 → 1の位を四捨五入 → +10円(エクストラ)
例)2026年1〜3月期:(2025年9月:467.9+10月:498.9+11月:510.9)÷3=492.6円 → 四捨五入490円 +10円 = 500円/kg

NSPが3カ月ごとに固定される仕組みは、銅の建値(ほぼ毎週更新)と比べてサプライヤーとの契約価格が安定しやすいという特徴があります。ただし3カ月の遅効性があるため、LMEが急騰した場合に国内価格への反映が遅れる——逆に急落した恩恵も遅れて届くという点が興味深かったです。

価格推移:2025年後半から2026年3月の動き

2025年後半から2026年にかけてのアルミ価格は、じわじわとした上昇から急伸という展開でした。特に2026年3月に入ってからの動きは急で、約4年ぶりの高値圏となっています。

LME アルミ(USD/トン) 国内NSP(円/kg)×6(目盛り調整)

※ 国内NSPは表示上×6でスケール調整しています。実際の単位は円/kgです。NSPは四半期ごとに更新されます。参考値のため実際の相場と差異が生じる場合があります。

時期 LME アルミ(USD/トン) 参考為替(円/USD) 円換算目安(円/kg) 国内NSP(円/kg)
2024年3月頃 ≒ 2,300 ≒ 151 ≒ 347 ≒ 400
2025年1月頃 ≒ 2,600 ≒ 155 ≒ 403 ≒ 460
2025年9〜11月(上昇局面) ≒ 2,650〜2,750 ≒ 150〜155 ≒ 398〜426 ≒ 470〜490
2026年1〜3月期(NSP確定) 500(前期比+30円)
2026年3月(最新) ≒ 3,420〜3,470 ≒ 155〜159 ≒ 530〜551 次期(4月〜)に反映予定

注目したのは、LMEの3月現在の水準(3,420〜3,470ドル/トン)が、2026年1〜3月期NSP算出に使われた2025年秋の地金平均(467〜510円/kg台)をすでに大きく上回っている点です。このままLMEが高止まりすれば、2026年4〜6月期のNSPは大幅に引き上げられる可能性が高いということになります。

価格を動かす5つの要因

2026年3月のアルミ価格急伸の背景には、銅とは異なる要因が複合していました。特に中東情勢が直撃しているという点が印象的でした。

中東情勢・ホルムズ海峡封鎖

2026年3月、イランとの紛争によりホルムズ海峡が封鎖され、ペルシャ湾からのアルミ出荷が停止。バーレーンの製錬所「アルバ」が生産ライン3本を停止し、カタールも天然ガス不足で一部停止。この地域は世界のアルミ生産の約9%を占める。

中国の生産上限政策

中国は世界のアルミ生産の約60%を占めるが、2025年に4,500万トンの上限を超えたため、2026年は生産が横ばいになる見込み。中東の供給障害を中国が補完できない構図が、需給引き締まり観測を強めている。

トランプ関税:アルミへの25%

トランプ政権が全輸入アルミニウムに25%の関税を課すと発表。日本からの対米アルミ輸出規模は限定的だが、国際的なアルミフローの歪みが生じ、地域プレミアムの変動につながる。リオ・ティントは日本向けQ2プレミアムを350ドル/トンに引き上げ。

EV・太陽光・蓄電池需要

EV車体・バッテリーケース、太陽光パネルフレーム、大型蓄電システムでアルミ需要が拡大。軽量化ニーズが高まるEV普及とともに、「電化需要」はアルミの長期的な価格下支え要因になっている。

エネルギーコスト:アルミ製錬の特殊事情

アルミ製錬は電力を大量消費する(電気代がコストの約30〜40%)。ホルムズ封鎖によるエネルギー価格高騰は、アルミの製錬コスト上昇→供給削減という二重の打撃になる点が、他の金属と異なるアルミ固有のリスクとして注目されている。

「アルミニウムは電気の缶詰」という言葉を調べて初めて知りました。製錬に膨大な電力を使うため、エネルギー価格が上がるとアルミの生産コストも直撃する——今回の中東情勢がアルミ相場に与える影響が銅よりも大きい理由のひとつがここにあると感じました。

2026年の見通し:シナリオ別に整理する

中東情勢の長期化・中国の生産抑制・トランプ関税という3つの供給側リスクが重なっており、2026年のアルミ価格は上振れリスクが大きい状況です。

シナリオ LME想定レンジ(USD/トン) 円換算目安(円/kg) 主な前提条件
強気シナリオ 3,500〜4,200 約543〜651 中東紛争長期化・ホルムズ封鎖継続・中国生産横ばい・EV需要加速
基本シナリオ 2,800〜3,500 約434〜543 中東情勢の段階的緩和・中国生産抑制継続・需要は堅調維持
弱気シナリオ 2,300〜2,800 約357〜434 中東緊張緩和・中国生産再拡大・世界景気後退・ドル高

銅と比較して感じたのは、アルミは「中東リスク」という地政学要因の比重が特に大きいという点です。銅は需要主導(AI・EV)で動いている側面が強いのに対し、アルミは今回のように供給障害が相場を動かすという違いが見えました。同じ非鉄金属でも価格を動かすメカニズムが異なるという点が興味深かったです。

円換算価格表:NSPへの反映タイミングに注意

アルミ調達でポイントになるのが、LMEの動きがNSPに反映されるまでに3カ月程度のタイムラグがある点です。現在のLME急騰が実際の調達コストに乗ってくるのは2026年4月以降になります。

円高(1USD=140円) 中立(1USD=150円) 円安(1USD=160円)

※ プレミアム・NSP調整分は含まない概算値。LME円換算=LME価格×為替÷1,000。実際の国内NSPとは算出方法が異なります。

為替シナリオ LME 2,800 USD時 LME 3,200 USD時 LME 3,600 USD時
円高(1USD=140円) ≒ 392 円/kg ≒ 448 円/kg ≒ 504 円/kg
中立(1USD=150円) ≒ 420 円/kg ≒ 480 円/kg ≒ 540 円/kg
円安(1USD=160円) ≒ 448 円/kg ≒ 512 円/kg ≒ 576 円/kg

現在のLME(約3,450ドル)と円安(158円)で計算すると円換算は約545円/kgとなり、現行NSP500円/kgをすでに上回っています。4〜6月期NSPはこの水準が継続すれば550円前後になる可能性があり、直近の調達計画に影響が出る前に手を打てるかどうかが重要になってきます。

調達担当者向け:リスクヘッジの考え方

※ 以下はリスク管理の考え方の整理であり、投資・財務アドバイスではありません。具体的な判断は専門家にご相談ください。
手法 概要・メリット アルミ特有の注意点
NSP改定前の在庫積み増し LMEが急騰しているがNSPはまだ旧値の期間中に在庫を積み増すことで、次期NSP引き上げ前のコストで確保できる。 在庫保管コスト・キャッシュフロー・品質劣化リスクとのバランスが必要。
分散購入・平準化 NSP改定タイミングをまたいで購入を分散し、高値期・安値期のコストを平均化する。 アルミは四半期ごとのNSP固定があるため、銅ほど細かいタイミング調整は難しい。
二次合金・スクラップの活用 純アルミ地金よりコストの低いアルミスクラップや二次合金地金(AC4C等)の活用を検討。 成分・不純物の管理が必要。用途によっては純度要件があり使用できない場合もある。
代替材料の検討 アルミが高騰する局面では、用途によっては樹脂・マグネシウム合金・高張力鋼への切り替えを検討する。 設計変更・試作・品質確認に時間とコストが必要で、即時対応は難しい。
情報ウォッチの習慣化 LME価格・NSP・為替を定期確認し、次期NSP水準を事前に試算しておく。NSP改定は四半期ごとなので予測しやすい。 日経新聞のアルミ地金月間平均価格を3カ月追うだけで次期NSPが概算できる。

銅と比べてアルミ特有だと感じたのが「NSP改定前の先読み購入」という発想です。NSPは四半期ごとに固定・公表されるため、現在のLME水準から次期NSPをある程度試算できます。「次の3カ月は高くなりそう」という判断が立てやすい分、準備できる余地があるとも言えます。

調べてみてわかったこと

アルミニウムは「電気を大量消費して作る金属」という製造特性から、エネルギー価格や地政学リスクの影響を特に受けやすいことがわかりました。今回の中東情勢による中東アルミ製錬所の停止→ホルムズ海峡封鎖によるエネルギー高→製錬コスト上昇という連鎖は、まさにアルミ固有のリスク構造を示しています。また銅が毎週更新の建値で動くのに対し、アルミはNSPという四半期ごとの仕組みがあることで、調達コストの先読みがある程度しやすい点も今回の発見でした。材料を理解することと、その材料の価格構造を理解することは別の学びだと改めて感じています。

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