SUJ2について解説します:ベアリングから金型ガイドまで使われる「高炭素クロム軸受鋼」の秘密

SUJ2について解説します:ベアリングから金型ガイドまで使われる「高炭素クロム軸受鋼」の秘密

世界中のボールベアリングに使われるSUJ2(高炭素クロム軸受鋼)。この材料がプレス金型のガイドポストやブッシュなど精密部品にも広く使われています。「軸受鋼がなぜ金型部品に向くのか」—その理由は「高清浄度」という製造精度の高さにあります。

① SUJ2の記号・規格を読み解く

SUJ2 記号の意味(JIS G4805) S U J 2 Steel 鋼 Use(用途別) Jiku-uke 軸受(用途記号) 種類番号2 高炭素Cr鋼(主要品)

「S=Steel」「U=Use(用途別鋼)」「J=Jiku-uke(軸受)」「2=種類番号」。JIS G4805規定の高炭素クロム軸受鋼です。炭素約1%+クロム約1.5%というシンプルな組成ですが、「高清浄度」という製造上の厳密な管理がこの鋼の価値の核心です。

② 軸受鋼のグレード比較

JISAISI特徴用途例
SUJ252100標準軸受鋼。C:1.0%・Cr:1.5%。最も普及ボールベアリング・ガイドポスト・精密ピン
SUJ3A485 Gr.1Si増量で焼入れ性向上大型・肉厚の軸受
SUJ5Mo添加で焼入れ性高い超大型軸受(鉄道・風力)

③ 核心概念:なぜ「高清浄度」が軸受鋼の命なのか

💡 ポイント:ボールベアリングは「点接触」で何百万回と転がります。点接触部には非常に高い応力が集中しますが、鋼中に「非金属系介在物(アルミナ・シリカなどの不純物の塊)」があるとそこが応力集中点になり早期破壊につながります。SUJ2はこの介在物を徹底的に除去した「高清浄度製錬」で製造されます。シンプルな成分でありながら、製造精度そのものが価値の源泉です。
⚠️ 注意:SUJ2は靭性が低い(低温焼戻し・HRC 60〜65)。衝撃荷重が大きな型刃やプレス工具には不向き。「精密に転動・摺動する部品」に用途を限定して使うのが正しい選び方。

④ 他材料との使い分け(レーダーチャート)

SUJ2 SKD11 SKS3
特性SUJ2SKD11SKS3
均質性・高清浄度◎◎(軸受鋼基準)
転がり疲労寿命◎◎
硬度(焼入れ後)HRC 60〜65HRC 58〜62HRC 60〜63
耐摩耗性
靭性△(低温焼戻し)
コスト

⑤ JIS・海外規格の対応

規格鋼種名備考
JIS(日本)SUJ2JIS G4805
AISI/SAE(米国)52100世界で最もよく知られる軸受鋼記号
EN(欧州)1.3505 / 100Cr6「100Cr6」=C 1%・Cr 6/10=1.5%の意
GB(中国)GCr15Cr 1.5%(15/10)の意味
ISOISO 683-17軸受鋼の国際規格

⑥ 主な用途

🔩 ガイドポスト・ライナーブッシュ

金型の上型・下型を精密案内する部品。何万回摺動しても真円度が崩れない均質高硬度が必要。

📌 精密ピン・パイロットピン

小径精密パンチやパイロットピン。均質な組織で研磨後の真円度・面粗度が安定。

🎯 精密スリーブ・ブッシュ

精密な穴を持つスリーブ。SUJ2の均質性で内径の真円度と面粗度が安定する。

⚙️ ボールベアリング(本来用途)

金型に組み込まれるベアリングの球・レース。これがSUJ2の元々の用途。

⑦ まとめ

SUJ2(52100・100Cr6)の価値は「高清浄度・均質な炭化クロム分散・HRC 60〜65の安定高硬度」にあります。これらの特性はボールベアリングだけでなく、ガイドポスト・ブッシュ・精密ピンなど「精度が命の摺動部品」にも直結します。シンプルな成分で製造精度を極めた材料が、世界標準(AISI 52100・EN 100Cr6)として広く採用されている理由です。精密摺動部品の材料選定では、まずSUJ2を第一候補に検討してください。

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