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TASUICHI-BITO Vol.1 (前編) 葉山発、日常が心はずむものになるニット。 TASUICHI-BITO Vol.1 (前編) 葉山発、日常が心はずむものになるニット。

今回ご登場いただくのは、海と山に抱かれた葉山にアトリエを構え、ニットバッグやニットキャップを作る渡部まみさん。特別な一瞬ではなく普段の暮らしに馴染んで使いやすく、しかも身につけることで、毎日が少しだけ楽しく素敵になる。まさに「たすいち」な渡部さんの作品は、どんな風に生まれるのでしょうか。

自由な糸の組み合わせで思い通りのテクスチャーを。 自由な糸の組み合わせで思い通りのテクスチャーを。

緑豊かな住宅街の一画に渡部さんのアトリエ「CORNER」はあります。明るい陽ざしが注ぐ空間で、渡部さんの指先から生み出されるのは表情豊かなニット作品。コットンやリネン、ウールはもちろん、リボンやレザー、時にはタコ糸まで、さまざまな素材を使って編み上げられるのです。「注文を受けたら、お客様と一緒に糸を選ぶところから始めます。好きな素材、好きな色、好きな太さを選んでいただいて、それを2本どり、3本どりのミックスにして使うことが多いですね」こうして生まれるのが、世界にふたつとないテクスチャーや奥行きのある色合い。「糸と編み針さえあれば、自分の手で思い通りのテキスタイルを作り出せる。布帛と比べて、自由度がとても高いんです。それがニットのおもしろさ。お客様と一緒に作り出したバッグや帽子が、使う人、身につける人の日常を少しだけでもワクワクと心はずむものにできたら」

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グラデーショントートバッグと、珊瑚を思わせるもこもこのサンゴポーチとポシェット。持つだけで楽しくなる人気のアイテムです。

その人のための一品。オーダーだからできること。 その人のための一品。オーダーだからできること。

普段の暮らしにやさしく寄り添い、楽しさや上質さをプラスして日常を豊かにしてくれる。渡部さんのニットは「たすいち」な魅力にあふれています。例えばニット帽。実は鎌倉のデリカテッセン「ロングトラックフーズ」とのコラボレーションアイテムである、ニットキャップのようなティーコゼがきっかけに生まれたアイテムです。子供から大人まで大人気。親子にはじまり、3世代、4世代でお揃いをオーダーする人も少なくありません。「家族のお祝いに、新生児から100歳のおばあちゃんまで大家族の注文をお受けしたことも。まったくのお揃いではなく、同じデザインで色違いや、同じ編み地で違うデザインになるように工夫することですごく喜んでもらえました」それぞれの個性を大事にしながら、緩やかだけど確かな家族の繋がりを表現したキャップには、オーダーメイドだからできる楽しさが詰まっていました。

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ミックスカラーが楽しいコットンキャップ、コットンヘアバンドはさらっとした手触りでウールのチクチクが苦手な人にもオススメ。

ものづくりの転機となった葉山での暮らし。 ものづくりの転機となった葉山での暮らし。

作品そのままに自然体な印象の渡部さんですが、以前はアバンギャルドなファッションに身を包んでいたのだとか。もともとファッションが大好きで長野から都心の服飾専門学校へ。大手アパレルメーカーにニットデザイナーとして勤めていた頃は、好きな仕事に没頭してクローゼットには気合いの入った仕事着ばかり。その後、友人の誘いで服飾専門学校の教職に就いてからも、とんがったモード系が中心だったといいます。「当時10年来の友人だった夫の住む葉山に遊びに来たんですが、その時もレザージャケットにブーツで黒づくめ。太陽や海や山に、全然似合っていなくて(笑)」葉山に住み始めた当初も、何を着ていいのか迷子状態に。しかし忙しかった仕事から解放され、本を読んだり食べることや暮らすことをしっかり考えて時間と手間をかけていくうちに、暮らしが変わり、着るものが変わり、作るものにも変化が現れてきました。以前を知ってる人から”どうしたの?”と驚かれますと渡部さん。「無理はしなくなりました。今もパンクは好きだけど、身につけたいものや作りたいものは葉山の陽射しや空気に馴染むもの。心地よく暮らせるもの。明るくてナチュラルなものが増えました」

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渡部さん愛用のグラデーショントートバッグ。丈夫で長持ち、とても7年ものとは思えないほどしっかりしている。
  • 渡部まみさんの写真
渡部まみさん

わたなべまみ/都内の服飾専門学校を卒業後、 大手アパレルメーカーに就職。ニットデザイナーとして経験を積んだ後、服飾専門学校の教員に。 2007年、結婚を機に退職して葉山に移住し、ニット作家として独立。2008年には自らのブランド〈short finger〉を立ち上げた。 現在は葉山のアトリエ「CORNER」を拠点に活動。著書に『エコアンダリヤとサマーヤーンで編むバッグと小物』(学研プラス)など。

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